2回目のコロナ発生源調査を拒否
背景に見える中国の政治的意思
「新型コロナウイルスの発生源だけでなく、政治ウイルスの発生源も追究していかなければならない」――。
7月25日、中国の王毅国務委員兼外相(以下敬称略)が、四川省成都で開かれた、フィンランドのペッカ・ハーヴィスト外相との会談後、共同記者会見でこう発言した。
先日も中国共産党結党100周年式典が開かれたが、中国は来年2月に開催予定の北京冬季五輪、秋の第20回党大会を含め、「政治の季節」を迎えている。こうした中で、共産党指導部が最も警戒してきた不安要素の一つが、新型コロナウイルスの発生源問題をめぐって中国が国際社会からの非難を浴び、孤立する事態に他ならない。
その意味で、世界保健機関(WHO)が中国に対して2回目の発生源調査を実施する計画を披露したことは、党指導部にとっては痛手となった。欧米の一部国家ではなく、WHOという、中国が「コロナ外交」を展開する上で依拠、利用してきたプラットフォームによる計画であり、中国とて頭ごなしに否定はできない。
7月22日、国務院新聞弁公室が主催した記者会見にて、国家衛生健康委員会の曽益新副主任が、WHOによる計画は「常識を尊重しない、科学に対する傲慢」の表れだとして、調査の受け入れを実質拒否していた。中国政府の立場を代表する表明である。王毅発言はそれに続くものであり、外交統括者の立場から党指導部の政治的意思を国内外に示したといえる。
「WHO事務局が提出した第2段階の発生源調査計画には、科学者たちも驚かされた。第73回WHO大会決議の要求から乖離しているだけでなく、第1段階の合同研究報告が下した結論と提言を無視するものだからだ。米国がWHOに戻ってきた真意は、新型コロナウイルスを抑え込むために国際協力をするためではなく、引き続きこのプラットフォームを借用してあらゆる政治的ウイルスをまき散らすことにあるのだろう。いかなる仕事の計画は、仮にそれが真の意味でウイルスを追究するものではなく、中国に汚名を着せるためのものであるとすれば、独立主権国家として、中国がそれを受け入れることは不可能である」(7月25日、共同記者会見における王毅の発言)