ハーバードビジネススクールで「リーダーシップと企業倫理」などの講座を教えるサンドラ・サッチャー教授は先月、「信頼される経営」をテーマにした著書を上梓した。コロナ禍で先の見えない状況が続く中、企業にとって信頼を獲得していくことは大きな課題だ。日本企業の例を挙げながら、「信頼される企業」に欠かせない要素について解説する。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
リクルートが「過去の反省」を
サイトに公開する二つのメリット
佐藤 7月6日、「信頼される経営」をテーマとした著書『パワー・オブ・トラスト』(The Power of Trust: How Companies Build It, Lose It, Regain It)を出版されました。著書にはリクルートホールディングス、日本航空、タカタなど日本企業の事例も含まれています。なぜ「信頼」について研究しようと思ったのですか。
サッチャー 「信頼」という概念に興味を持ったきっかけは、2017年、ハーバードの教材を執筆するためにリクルートホールディングス(以下、リクルート)の経営者や関係者を取材したことです。「リクルート事件」の後、同社がいかに信頼を回復したかについて、当事者から具体的な話を聞き、感銘を受けました。
リクルート事件後の約30年間で、同社は売上高2兆円を超えるグローバル企業へと成長しました。一度失ってしまった信頼は回復できない、という通念とは逆の結果を示していることに興味を持ち、「信頼」について深く研究することにしたのです。
佐藤 リクルートの特にどのような点に興味を持ちましたか。