戦後最大ともいわれる経済危機を迎えている日本企業にいま問われているのは「生存力」と「復元力」だ。こうした中、多くの企業では日本企業の強みを学び直す機運が高まっているのだという。世界に数多くのスーパーエリートを輩出してきたハーバードも長年、日本企業独自の強みに注目してきた。コマツもその一つだ。『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)を上梓した佐藤智恵氏が、ハーバードでコマツの経営が注目される理由を解説する。
トヨタ、ホンダと並んで
ハーバードが注目する「コマツ」の経営
コマツはトヨタ自動車、ホンダと並んで、1980年代からハーバード大学経営大学院(以下、ハーバード)で注目されてきた企業です。コマツに関する多くの教材がハーバードビジネスパブリッシングから出版されています。
今回『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)を執筆するにあたって、特に知りたいと思ったのが「なぜコマツがハーバードでこんなに熱心に研究されているのか」という点でした。取材を進めてみると、コマツが1980年代の日本車と同様に「アメリカ企業の脅威」とみなされてきたことがわかりました。
「キャタピラーとコマツ 1986年」(Caterpillar-Komatsu in 1986)という教材はまさにそれを象徴していますし、「中国市場におけるコマツ」(Komatsu in China)という教材も、多くのアメリカ企業は中国で失敗を重ねているのになぜコマツはうまくいっているのかという関心から書かれたのだと思います。
以前、ある経営学の教授にインタビューした際、「ハーバードの教員は、アメリカの脅威になりそうな国や企業を徹底的に研究する傾向がある」とおっしゃっていましたが、それはコマツにも当てはまると思います。コマツは世界第2位のシェアを誇る建設機械メーカーであり、世界に先駆けてIoTを実現した企業なのですから、研究対象にならない理由がありません。