TVerが東京五輪で攻める!「テレビ局の事情よりユーザー第一」の本気度とは?TVerの龍宝正峰代表取締役社長 Photo by Kanae Hokin

この夏、テレビ局はどこもかしこも、オリンピックで「お祭り騒ぎ」だ。そんな中、民放テレビ局の見逃し配信サービス「TVer(ティーバー)」は五輪後を見据えながら、オリンピック・パラリンピックの配信をステップアップの一つにしたいと考えていた。動画戦国時代の今、単にドラマやバラエティーを流すだけのサービスでは物足りない。この夏、さらに成長するための正念場を迎えている。(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)

脱・見逃し配信、オリンピックで新たなユーザーを獲得できるか

 2015年からスタートした「TVer」は、民放テレビ局で放送された約350番組を、放送直後から1~2週間ほどの期間限定で無料視聴できるサービスだ。

 今年3月の月間動画再生数は1億8305万回で、昨年同月からほぼ倍増。また、月間ユーザー数は1月に1697万MAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー)を記録、過去最高を突破し、この先の伸びしろも感じられ、極めて好調だ。

 スタートして6年目を迎えるTVerだが、今、「見逃し配信」というテレビの補完的サービスから脱却しようとしている。

 まず、勝負をかけているのが、オリンピックの配信だ。

 これまでも放送時間外のゴルフや高校サッカーの中継を配信してきたが、現在、東京オリンピック・パラリンピックの競技を数多く配信している。放送チャンネル数には限界があるが、動画配信は条件次第でいくらでもチャンネルを増やすことができるのも強みだ。

 また、スポーツ中継はTVerに欠けていた男性ユーザーの獲得にもつながり、よりサービスとして強度が増すだろう。というのも、実はTVerはこれまで10~30代と比較的若い女性ユーザーが6割を占めるサービスだった。女性ターゲットのドラマなどがメインコンテンツに多かったからだ。

 では、なぜこれらのジャンルが配信されてきたのか。理由の一つに、テレビ局側が比較的権利処理しやすかったという点が挙げられる。

 これまで、テレビ局の大人の事情で制限されることの多かったTVerだが、さらなる成長のため、テレビ局のしがらみから「脱却」を図ろうとしているのだ。