農薬散布Photo:JIJI

有機農業に冷淡だった農林水産省が一転、農薬の使用量を2050年までに半減する目標を含む「みどりの食料システム戦略」を打ち出した。だが、JAグループなどは面従腹背の姿勢であり、農業業界の既得権益に切り込むのは容易ではなさそうだ。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

日本の農薬使用量は英独仏の4倍!
JAと農水省の「癒着」が激増させた

 農水省が、過去の政策を否定しているといっても過言ではない抜本的な政策の転換に乗り出した。5月に同省が策定した「みどりの食料システム戦略」のことだ。

 この戦略は、農業の環境負荷を軽減するためのイノベーションを起こすためのもので、野心的な政策目標が盛り込まれている。2050年までに化学農薬の使用量を50%低減する(農薬ごとの環境負荷の大小を踏まえたリスク換算)、化学肥料の使用量を30%低減する、有機農業を耕地面積の25%に拡大する――などがそうだ。

 だが、削減対象となる農薬や肥料などを扱うJAグループなどには農水省幹部が多数天下りしている。そうした農業関連事業者の利権に切り込むのは容易ではない。

 その見方を裏付けるために、ここからは、農業業界の既得権益となってきた「コメを巡る規制」が農薬の過剰使用を招いている実態を明らかにしていく。こうした癒着構造にメスを入れることなく、今回の改革が実現することはあり得ない。