クラウドではなく、“クラウドのメリット”を提供する

 サーバー、ストレージ、ネットワークなどの機器を売るだけでは生き残れない――そこでネリ氏が進めているのが、「エッジからクラウドまでのプラットフォーム」だ。具体的にはどういうことなのか?

 エッジとは、我々が手にするモバイル端末やPC、そして病院、学校、工場など「生活や仕事の場所」だ。データが生成される場所でもある。ネリ氏はCEOに就任後、今後4年でインテリジェントエッジ分野に40億ドルを投じることを発表している。

 エッジで生成されるデータを収集して分析するところがクラウドだが、クラウドはAWSのようなパブリッククラウドだけではない。企業が持つサーバー(オンプレミス)や自社内のクラウド(プライベートクラウド)、これらにパブリッククラウドを一部取り入れたハイブリッド型などさまざまな形態がある。「クラウドは運用モデルにすぎない。企業はクラウドを使いたいのではなく、クラウドがもたらすスピードやアジリティー(敏捷性)を得たいのだ」とネリ氏は分析する。

 それならばとHPEが進めているのが、「HPE GreenLake」(以下、グリーンレイク)だ。顧客はこれまで通りサーバーなどの機器を手元に置きながら、使った分だけ料金を払うモデルを選ぶことができるサービスだ。これにより、ハードウエア事業をテコに“アズ・ア・サービス”として顧客にクラウドのような体験を提供できる。HPEは2017年にグリーンレイクを発表、以来利用できる対象を拡大してきた。2019年の自社イベントで、ネリ氏は「2022年までに全ての製品をサービスとして提供する」と約束している。

「2019年に、将来の企業はエッジ中心、クラウド型、データ主導になると予言した」とネリ氏。

「データはあちこちにあり、アプリケーションはさまざまなところで動いている。現在のコンピューティングモデルは、パブリッククラウドを中心とした中央集中型だが、IoTなどにより今後は分散型になっていくだろう。データが生成されるところにクラウドが行く。ここに大きなチャンスがある」

 グリーンレイクはそれを実現する重要な製品となる。HPEはインフラを支える機器の販売がメインではなく、ソリューションプレーヤーに軸足を変えている、とネリ氏は説明する。

ヒューレット・パッカード・エンタープライズのCEO、アントニオ・ネリ氏 Photo by: HPEヒューレット・パッカード・エンタープライズのCEO、アントニオ・ネリ氏 Photo:HPE

 このような改革と平行して、ネリ氏は2020年12月にHPEの本社機能をテキサス州ヒューストンに移行した。周囲に大学があり優秀な人材を確保しやすいことや、コストが比較的低いことなど、シリコンバレーにはない魅力がある、とネリ氏。シリコンバレーには引き続きイノベーションハブを残し、最先端の開発を進めるものの、もはやシリコンバレーカンパニーであることにこだわる必要はないという決意のようなものも感じられる。