3つの問いでわかる「自分らしいキャリア」のかたちPhoto:photo AC

日本企業が「ジョブ型」へ舵を切ることにより、キャリアの前提となるゲームのルールが変わりつつある。そのルールを知っているかどうかで、キャリアの戦い方が変わってくるのである。コーン・フェリーの加藤守和氏が執筆した、書籍『「日本版ジョブ型」時代のキャリア戦略』は、「ジョブ型」へ移行しようとする日本企業に共通する課題や、日本型雇用や労働慣行との兼ね合いなどを解き明かす。その上で、これからキャリアを構築しようとする20~30代のビジネスパーソンに向けて、個人が自立的なキャリアを構築していくための実践的な方策を提言する。

キャリアの優先順位や価値観を認識する

「自分らしいキャリア」を歩むためには、自分が何を大事にし、何を大事にしないかを知る必要があります。いわば自分だけのキャリア観です。キャリア観を確かめるためには、キャリア論の大家であるMITのエドガー・H・シャイン氏が提唱した「キャリア・アンカー」という考え方が有効です。アンカーとは「錨(いかり)」の意味ですが、キャリア・アンカーは自分自身が大事に思っている価値観であり、個々のキャリアの拠り所を指します。

 あなたのキャリア・アンカーを知るために、次の3つの問いについて考えてみてください。

1. 自分の得意なもの(不得意なもの)は何か?
2. 自分の本当にしたいこと(したくないこと)は何か?
3. どのようなことに価値を見出せるか(見出せないか)?

 これらの3つの問いは、「能力」、「欲求」、「価値」についての自己イメージを表したものです。

「能力」は社交性やコミュニケーション力といったヒューマンスキルを挙げてもかまいませんし、語学力や資格、プログラミング技術などのテクニカルスキルでもかまいません。自分が認識している自分の才能を挙げてみてください。

「欲求」は、自分が何をすれば心躍るかを考えてみてください。今までのキャリアを振り返ってみて、ワクワクするような高揚感があった出来事などを思い浮かべても良いでしょう。

「価値」は、自分が長期的な視点から、何に意味を見出すか、ということです。「欲求」と「価値」が類似している人もいれば、そうではない人もいるでしょう。自分なりに、自分の認識を明らかにすることが、まず大切です。

 これら「能力」、「欲求」、「価値」は、キャリアの判断に大きな影響を及ぼします。大事なことは、自分がどのような「能力」、「欲求」、「価値」を持っていて、どのような優先順位を持つことが、自分に相応しいかを自己認識することです。

 キャリアには、不測の事態が往々にして起こります。不測の事態のときに、自己認識しているキャリアの優先順位や価値観が、キャリアにおける錨(アンカー)の役割を果たします。キャリア・アンカーを持つことで、仮に航路から外れたとしても、本来の「自分らしいキャリア」に戻るように軌道修正をおこなうことができるのです。