日本企業が「ジョブ型」へ舵を切ることにより、キャリアの前提となるゲームのルールが変わりつつある。そのルールを知っているかどうかで、キャリアの戦い方が変わってくるのである。コーン・フェリーの加藤守和氏が執筆した、書籍『「日本版ジョブ型」時代のキャリア戦略』は、「ジョブ型」へ移行しようとする日本企業に共通する課題や、日本型雇用や労働慣行との兼ね合いなどを解き明かす。その上で、これからキャリアを構築しようとする20~30代のビジネスパーソンに向けて、個人が自立的なキャリアを構築していくための実践的な方策を提言する。

「自分が歩みたい未来」を引き寄せるたった2つのことPhoto:photo AC

キャリアを左右する「偶発的な出会い」を増やす

 キャリアは過去・現在・未来を含めて、歩もうとする道筋を指します。しかし、そもそも、キャリアは個人の力でコントロールできるものなのでしょうか。1999年にスタンフォード大学のJ・D・クランボルツ教授が発表した「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」という論文に興味深い研究結果が出ています。その論文は、人のキャリアの約8割は偶然のできごとによって左右されていることを証明したものです。これだけだと、「キャリアは運任せ」ということになってしまいます。しかし、クランボルツ教授は同時に、「より良い偶然がたくさん起きている人と、そうでない人がいて、その違いは普段の行いにある」とも説いています。これこそが、まず最初に押さえておきたい重要なポイントです。

 未来をコントロールすることは、誰にもできません。ですが、「未来につながる行動」を意識的に実践することで、「自分が歩みたい未来」を引き寄せてくるのです。

 そのためには、次の2つのポイントが重要になります。

1 アクティブであること
2 自己ブランディングをおこなうこと

 まず、アクティブであることは、「行動量を増やす」ということです。公私ともに、アクティブに行動していく人には、すべからく機会が回ってくるものです。

 もう一つ、偶然の機会を増やすために重要なのは「自己ブランディング」です。他者は機会を差し出す前に、「あの人はこういうスキルがあるな」「あの人はこういうのが好きそうだな」と、思いを巡らします。その時に、他者のアンテナに引っかからないと、機会は巡ってきません。自分が「やりたいこと」を実現するためには、周囲にも同様に認識してもらわないと機会はやってこないのです。