日本企業が「ジョブ型」へ舵を切ることにより、キャリアの前提となるゲームのルールが変わりつつある。そのルールを知っているかどうかで、キャリアの戦い方が変わってくるのである。コーン・フェリーの加藤守和氏が執筆した、書籍『「日本版ジョブ型」時代のキャリア戦略』は、「ジョブ型」へ移行しようとする日本企業に共通する課題や、日本型雇用や労働慣行との兼ね合いなどを解き明かす。その上で、これからキャリアを構築しようとする20~30代のビジネスパーソンに向けて、個人が自立的なキャリアを構築していくための実践的な方策を提言する。
人事はたいてい自分の知らないところで決まる
キャリアの階段をのぼる方法のひとつは、「上司や周囲に引っ張り上げてもらう」ことです。自分を仕事人として認め、フェアに後押しをしてくれる「パトロン」を見つけることが大切です。「パトロン」を見つけるといっても大げさなことではなく、自分の強力な支援者をつくるということです。
自分の「人事」は、たいてい自分の知らないところで決められます。味方の数が多いほど、より良い機会は巡ってきます。社内的にパワーのある人の後ろ盾があれば、なおさらです。
とはいえ、役員や上司に対して接待ゴルフや飲み会のお供をしなさい、ということではありません。このような私的な感情での「パトロン」は、長期的なキャリアの助けになりません。周囲のやっかみを買ったり、社内政治に巻き込まれたり、ということもありえます。私的な感情で引っ張り上げられると、私的な感情によって引きずりおろされるものです。
そうではなく、「仕事人として認め、フェアに後押しをしてくれる味方」という意味合いである、とお考えください。やりがいのある機会を与えてくれたり、周囲の反対があっても「任せてみよう」と後押しをしてくれたりするような存在です。このような「パトロン」は、仕事上の接点から生まれてくるものです。「こいつは見所があるぞ」「こいつには任せてみたい」という何かを感じさせることからスタートするのです。
では、どうすればいいかというと、「パトロン」候補との仕事上のつながりができたら、相手の期待値を大幅に超えるアウトプットを出すことです。斬新なアイデアが埋め込まれたコンセプト、詳細まで練り込まれた計画、こだわりの詰まった企画、きめ細やかな関係者へのフォロー、納期の前倒しなど、いつもより一段パワーを込めていくことです。
本来は「仕事は常に全力投球」が理想ですが、なかなかそれはできるものではありません。「勝負所」はあるものです。尊敬する先輩や社内キーマンとの協働の機会が出来たときは絶好のチャンスです。全身全霊を込めて、本気の仕事をおこなうことです。人は本気に触れると、応援したくなります。大物を味方につけるには、本気の仕事をすることが、何よりも重要なことなのです。