ビジネスパーソンが「正解のない課題」に取り組むときに必要なことPhoto:photo AC

日本企業が「ジョブ型」へ舵を切ることにより、キャリアの前提となるゲームのルールが変わりつつある。そのルールを知っているかどうかで、キャリアの戦い方が変わってくるのである。コーン・フェリーの加藤守和氏が執筆した、書籍『「日本版ジョブ型」時代のキャリア戦略』は、「ジョブ型」へ移行しようとする日本企業に共通する課題や、日本型雇用や労働慣行との兼ね合いなどを解き明かす。その上で、これからキャリアを構築しようとする20~30代のビジネスパーソンに向けて、個人が自立的なキャリアを構築していくための実践的な方策を提言する。

未知の課題に対応できる「持論を形成する力」

「ジョブ型時代」を生き抜くための行動原理はいくつかあります。たとえば「持論を形成する力」です。

 キャリアの階段が一定以上になると、「未知の課題」に対応する機会が多くなります。「未知の課題」に必ずしも正解はありませんし、前例は役に立ちません。情報収集や状況の分析、解決策の立案とリスク評価などをおこない、最適解を導くことが必要になります。

「未知の課題」に対応するためには、キャリアの前半期から「持論を形成する力」を鍛えておくことが重要です。前例をただ踏襲するのではなく、自分なりに分析や仮説を重ね、正しいと信じられる持論を持つ習慣をつけておく必要があるのです。

「持論を形成する力」は、自分なりの判断をおこなう力です。それを身につけると、上司や同僚に振り回されることが少なくなります。上司や同僚からの要請・要望があったとしても、筋が悪いものであれば、反論・調整といったチャレンジができるようになるからです。このチャレンジの積み重ねが、「未知の課題」への対応力につながっていくのです。

「持論を形成する力」を持つためには、正解主義から脱却しなければなりません。日本の多くのビジネスパーソンは、国の学校教育の影響を色濃く受けています。さまざまな知識を詰め込み、正解をひたすら求める教育です。そのため、あらゆる課題には「正解がある」と無意識のうちに刷り込まれているのです。

 しかし、「未知の課題」は「正解のない」課題です。確からしい仮説を考え抜き、不安と戦いながら実行するしかないのです。正解主義に取りつかれてしまうと、不安が先に立ってしまい、実行に足が踏み出せなくなります。私たちビジネスパーソンは、学校教育と違い、ビジネスには「そもそも正解がない」ことを深く認識しなければならないのです。その不安を押さえ込む仮説こそが、「持論」です。そして、正解だったかどうかは実行の結果であり、後からしか分からないのです。