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急増する米国家計資産
一段と拡大する格差

 コロナ禍は大恐慌以来の規模とスピードで経済活動の落ち込みをもたらし、その回復には相次ぐ変異種の登場もあって時間を要している。その一方で、前例のない規模とスピードで発動された金融財政政策は、株価をはじめとする資産価格の急激な回復をもたらしている。

 資産価格の急回復で、米国の家計が保有する資産は急拡大した。2019年末から2021年3月末に米国の家計が保有する資産は15%(20兆ドル)も増加した。負債を差し引いた純資産は同期間に16%(19兆ドル)の増加となり、15カ月間の増加としては2004年以来の大きさとなった。

 家計資産の増加の内訳をみると、株式(7.4兆ドル)、不動産(4.0兆ドル)、流動資産(3.7兆ドル)、退職金口座(2.1兆ドル)、ミューチュアル・ファンド(1.6兆ドル)の順となっている(図表1)。

 家計資産の急増は、いわゆる資産効果を通じて個人消費を大きく押上げ、コロナ禍からの経済の立ち直りを支える大きな援軍となる。その一方で懸念されるのは、家計資産の急増がコロナ前から問題となっていた経済格差を一段と悪化させていることだ。

 米国家計の純資産が19兆ドル増えたうち、その7割は所得上位20%のグループによるもので、19兆ドルの半分は所得上位1%のグループによるものだ。伸び率でみると、上位1%のグループでは純資産が23%増加した一方、下位20%のグループでは2%しか増加しなかった。

 こうした格差の一段の拡大は、資産効果を通じた消費押上げ効果にとって制約要因となるだけでなく、低中所得層の政治的な不満を一段と募らせ、今後のバイデン政権の政策運営に影を落としかねない。