本稿では「経済がマイナス成長に陥っても資本主義は成立するのか?」を考えたい。筆者の結論は「成立する」である。また、資本主義は現在、格差や環境破壊などの問題と結び付けて論じられることが多く、「行き詰まり」を感じる読者もいるかもしれない。しかし、そうした問題は資本主義を捨てることではなく、手直ししつつ使うことで解決するのが、現実的・相対的に優れているように思う。それらの理由を説明しよう。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
マイナス成長でも資本主義は成立する?
株価や期待リターンはどうなる
はじめにお断りしておくが筆者は、マイナス成長の経済が望ましいとか、積極的に目指すべきだといった考えを持っているのではない。しかし、今後、日本の人口が減る場合に経済成長率は低下するだろうし、マイナス成長になることもあり得る。こうしたことが起こった場合に、果たして経済はどうなるのかを考えておくことは無駄ではないだろう。大げさな問いを立てるなら、「マイナス成長でも資本主義は成立するのか?」が関心事だ。
さて、想像の世界にようこそ。
読者には、資本家になったつもりで物事を考えてみてほしい。読者は2500億円の資産を持つ資産家だとしよう。そして、今期は年間100億円の利益が上がると予想される、あるビジネスを買収しないかと持ちかけられていると考えてほしい。あなたがそのビジネスに支払うべき価値はいくらか?