「資本主義の終焉」が叫ばれる今、もう一度読んでおきたい資本主義誕生の歴史。商品経済が栄え始め、産業革命によって一気に開花する自由放任経済とは、元々どのようなものなのか? 歴史の授業だとダラリと間延びしがちな中世から近代までの流れを、代ゼミの人気No.1講師が面白くわかりやすく教える、社会人のための学びなおし講座。

“オレ様”が支配する封建制度

 資本主義が栄える前、世界は日本もヨーロッパも「封建制」だった。封建制って言葉はよく“古くさい”の代名詞みたいに使われる(「今どきそんな封建的な考え方のヤツはいない」など)けど、もともとこれは経済用語。その意味は「主君が家臣に土地を与え、そこに農民を縛りつけるシステム」だ。

 つまり、権力者(領主)が領地(荘園)から年貢を吸い取るシステム、これが封建制だ。そう、農民から年貢を吸い取るシステムは、日本だけではなかったのだ。日本では12世紀、源頼朝から始まって江戸時代の末まで続いた、武家社会を支える制度だったけど、ヨーロッパの封建制はもっと古く、だいたい8世紀頃(西暦700年代)から14世紀ぐらいまで続いた。

 もともとは、その土地の権力者(領主)が国王から恩恵的に土地を借り、その代わりに国のために軍事奉仕をするという仕組みだったけど、王が「不入権」(荘園内への立入禁止権)を認めた頃から徐々に私領化し、ヨーロッパ各地の荘園は、次第に領主が支配する独立国家のようになっていった。

 一つ一つの荘園が、それぞれ年貢の取れる独立国家だ。じゃ、領主様は農民をいじめるどころかむしろ “金のなる木”として保護しつつ、逃亡を防ぐね。

 この辺は家畜を飼うときと同じ要領だ。だから封建制があった国の多くでは、農民は領主から保護されつつも田畑の勝手な売買は禁止され、国境には農民の逃亡を防ぐシステム、すなわち「関所」が設けられた。

 こんな中で商品経済が栄えるわけがない。商業なんて年貢のジャマだから、僕が領主なら領内で商業をやっているやつなんかいたら、棒で追い回して追放し、そこも全部畑にする。

 さらに言えば、年貢オンリーでいいわけだから、貨幣経済もいらない。こんな農業中心の自給自足体制で、商品経済が発展したら奇跡だ。しかしその後、そこにだんだん商品経済が入り込んでくる。