見えない通貨覇権の主役交代
ドル基軸の「リスク」もそのまま
1971年8月15日の「ドルと金の兌換停止」という衝撃的な米国政府の発表から、今年で50年が経過した。
いわゆる「ニクソン・ショック」から半世紀がたち、米中「新冷戦」という新たな局面の下でドルの弱体化や人民元の台頭といった通貨覇権の行方を占う論説も多い。
確かに外貨準備におけるドルの比率は低下傾向をたどり、新興国などのドル離れは顕著になっている。トランプ前政権による金融制裁の乱発は多くの国々の反発を強め、反米諸国の間では非ドルによる取引決済や非ドル建て商品市場の開設などの動きが散見される。
だが、通貨覇権における主役交代という姿は全く見えてこない。人民元やユーロの準備通貨や決済取引における比率は、今後5~10年で数パーセントは高まるだろうが、ドルの存在感が一気に凋落する可能性は極めて低いだろう。
ドル基軸体制の継続は、世界が抱える「2つの依存」リスクが今後も続くことを示唆する。