近頃、にわかに話題になっているのがコオロギ食。食料危機に対する問題意識の表れかと思いきや、その珍しさや「案外おいしい」という評判にひかれて試してみる人も多いようだ。筆者も実食してみることとしたが、昆虫食に抵抗感があることは否めない。果たして……。(フリーライター 武藤弘樹)
世界的な食料危機にどう備えるか
昆虫食に注目集まる
食料が当たり前のように確保されている日本で暮らしているとほとんど意識されることはないが、食料危機は人ごとではない。世界的な人口増加が、将来的に食料事情を圧迫する見通しだからである。
一説には、「2030年にタンパク質危機(タンパク質の需要が供給を上回る)が訪れる」とされている。農林水産省が公表している世界の食料需給見通しを示したデータでは、小麦や米などの生産量が2030年に消費量を下回る、あるいはほぼ同じになる、と出ている。
どうやら食料需給は2030年あたりが転換期となりそうだが、2030年と聞けばそこまで遠い未来でもない。近い将来、人類の食料をいかに確保するかが喫緊の課題であり、その打開策として現在昆虫食が注目されているようである。
昆虫食とは、いかにもアングラ的サブカルの趣が感じられ、東京・阿佐谷あたりにいけば食べられそうなイメージだが、実はかなりメジャーになってきている。日本橋馬喰町の昆虫食レストランで行列を作ったり、かの天下の無印良品でも「コオロギせんべい」が昨年発売されて以来、大人気商品となったりしている。
本稿では、昆虫を恐れる中年の筆者が、きたる食料危機に備えるべくコオロギ食に挑戦し、これをひとつのサンプルとして、日本人は昆虫食に順応できるようになるのかを占ってみたい。