「そりゃ、ウチだって、やれるならアップルやサムスンみたいに、一流大学の博士号を持ってるようなスター開発者をヘッドハントしてみたい。でも、そんなおカネないからね(笑)」そう笑いながら答える山本社長の会社には、なんと開発担当者はゼロ。
世界シェア90%を誇るウエットスーツ素材、世界No.1の遮蔽率を達成した放射線防護服、ハリウッドスターが「着たい!」と感動したアクション映画用コスチューム……。トップクラスの製品を次々に生み出す秘密はどこにあるのか。
「ウチだって、アップルやサムスンのマネをしたい……」
結論から言えば、ウチの会社には開発担当者がいない。
専業の開発担当者を置くのではなくて、社員全員が開発担当者になる。その理由はいたって単純で、専業で雇うとコストがかかるから。で、コストをかけたところで、そのスペシャリストの作った商品が必ず売れるとは限らない。超精鋭部隊が作っても大ゴケすることはあるわけ。
大手はプロジェクトチームに有名な技術者を入れてるし、アップルだってサムスンだって、世界有数の超エリートがものすごい倍率を潜り抜けて入社して、バリバリ働いて商品を作ってるけど、やっぱり、なかには不発に終わる商品もあるでしょう。大手なら、たまには失敗してもいいかもしれない。でも、ウチみたいなちっちゃい会社では、そうそう失敗している余裕はない。
だから、人にコストをかけるくらいなら、商品の材料や品質テストにおカネをかけたほうがいい。そのほうがずっとおトク。
そりゃあ、おカネを注ぎ込んで「高給取りの商品開発者雇ったで!」って言ってもいいけど、そんなことをしても誰が「ほう、そうですか!」って感心してくれる?だーれも感心してくれないし、繰り返しになるけど、それでメシが食えるわけでもない。完成品でしか評価されないんだから、人件費に必要以上のコストをかけるのは間違ってる。