大阪の下町に、従業員数73人で「一人一億」稼ぎ続けるスゴい中小企業がある。ナイキ、ボーイング、BMWなど、世界の大企業を顧客に持ち、世界のトップアスリートが「着たい!」と口をそろえるウェア素材を手がける。「頭は下げない、酒は飲まない、ゴルフもしない」と言い切る四代目社長・山本富造さん(53歳)。大手を相手にしても、「エラいさん」を相手にしても、絶対、泣き寝入りしないで、しっかり稼ぐための「鉄則」を紹介する。
簡単に「一人一億」って言うけどさ……
高速水着素材で知られる大阪の山本化学工業株式会社・代表取締役社長。社員73名で、社員一人当たりの売り上げは1億円を超える。1959年、曾祖父、祖父は日本初の安価ボタン、父は消しゴム付き鉛筆で大成功を収めた発明家一家の長男として生まれる。1984年、25歳の時に父親の「社長、交代するで」の一言で経営者に。度重なる円高により長らく自転車操業を余儀なくされるも、「超高付加価値商品」に舵を切ったことをきっかけに逆転。現在は医療機器から放射線遮蔽服まで幅広く手がける。特技は少林寺拳法。正拳士四段を保持。ニックネームはトミー。
「一人一億」って簡単に言うけど、ウチみたいなちっちゃい会社でこれだけ稼ぐのは生半可なことじゃない。
あの超有名なスポーツメーカーのナイキでさえ、社員一人あたりの売上高は約4400万円(1ドル=80円換算)、日本国内でも、ウチと同じゴム製品の分野を見てみると、上位からニチリン7100万円、オカモトと東洋ゴム工業が6000万円、ブリヂストンと住友ゴム工業が5600万円となっている(いずれも2011年)。
「ここはケチったら、アカン!」とピンと来てドカーンと先行投資することもあるから、ちょっと一億に届かない年もあるものの、2011年の売上高は74億円、2005年からは平均して社員一人当たり一億円は稼ぎ出してる。
こうやって見ていけば、ウチみたいなちっちゃい会社が「一人一億」稼いでるのは、「がんばってるやん」「すごいやん」と誉めてくれる人も結構いると思う。
「一人一億」稼ぐのに、会社の大きさは関係ない。正しい戦いかたを知っていれば、ウチみたいなちっちゃい会社でも、ちゃーんと「一人一億」稼ぎ出せる。
僕は四代目の社長。僕の前には、消しゴム付き鉛筆で大成功を収めたおやじ、日本初の安価ボタンを大ヒットさせたじいさんと大じいさんがいた。戦後の物資不足、高度経済成長、円高、バブル崩壊……どんどん変わっていく時代のなかで、代々編み出してきた「鉄則」には、頭のいいヤツが集まってちょっと考えたくらいでは絶対に勝てない強みがある。
今回から始まる3回の連載では、その「鉄則」の一部を紹介しよう。