「海城」の生徒の探究心を刺激する、“サイエンスセンター”の仕掛けとは地下100メートルまでボーリングを行い、地中の年中安定した熱をヒートポンプでくみ上げる地中熱交換井(ボアホール)。壁のパネルには常時温度が表示され、右側の白い輻射パネルで夏ならひんやりした冷却水の様子を実感することができる

エネルギーの仕組みが見える建物

――では、実際に館内を拝見しながらお話を伺いたいと思います。エントランス部分は大きな吹き抜けになっていて、大学の施設みたいですね。

山田 床は全面石張り、4層吹き抜けのこの建物全体に、省エネルギーの仕組みを取り入れています。100メートル掘り下げて地中熱を地上に取り込んでいますし、壁には多孔質の大谷石をパネルで貼り付け、省エネ化を図っています。暖かい空気は上に行きますから、吹き抜けに設置した各階の温度計のデータをもとに、屋上の窓は自動的に開閉して空調も行うようになっています。こうした仕掛けを見えるように解説も付けてあります。

 コンペで決まった設計監理会社に本校の卒業生が2人いて、このプロジェクトの設計も担当してくれました。

――それは素晴らしいことですね。母校だけに一生懸命やってくれましたでしょう。

山田 はい。階段外側の板張りが印象的かと思いますが、大学施設での経験を取り入れたそうです。建設工事中には生徒参加の見学会も行いましたし、現場の作業をしている方に質問する生徒もいました。

 19年3月から既存の3号館を解体、基礎となる武蔵野礫層最上部にあたる基底面の地面まで10メートルほど掘り下げました。このとき、露頭面にグラスウールを接着し、乾燥・固着後にはぎ取りまして、その地質試料が足元に常設展示してあります。

――関東ローム層は耳にしたことがあっても、実際、自分の足元の地中がどうなっているかまでは分からないものですよね。

山田 BELSという建物環境認証制度があり、この建物は環境認証校舎として最高ランクの星5つを取っています。一次エネルギーを52%カットしている環境配慮の手法についても説明しています。

――こうした認証を得るにもおカネはかかるのでしょうが、見えるようになっているのがいいですね。

「海城」の生徒の探究心を刺激する、“サイエンスセンター”の仕掛けとは省エネとエネルギー循環を体感できる館内の仕掛け
(1)屋上から見た吹き抜けのエントランスホール (2)多孔質で調温・調湿効果を持つ階段脇の大谷石の壁は高さが14メートルあり、空調設備の使用抑制にも貢献する (3)「武蔵野ローム層」や粘土層、礫層といった地中の様子がリアルに分かる展示
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