人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し(9月29日発売)、がん、糖尿病、高血圧、食事、生活習慣、人間ドック、メンタルというさまざまな観点から、病気にならない知識と習慣をあますところなく伝えています。

バリウムより胃カメラがオススメ、2つの理由とは?Photo: Adobe Stock

 胃がんの早期発見に欠かせないのが「バリウム検査」と「胃カメラ検査」です。「バリウム」とは造影剤の一種です。レントゲンやCTを撮影するとき、コントラストをくっきりさせるために使います。

 実際の検査ではバリウムを飲み、台の上で回転させられ、その中でレントゲンを撮影していきます。このバリウム検査は「対策型検診」として公費で賄われているにもかかわらず、受診率は1~2割と非常に低いのです。

 原因としては「バリウムの味が独特で飲みにくい」「気持ち悪くなる」などがあります。また「医者は絶対にバリウム検査を受けない」「バリウム検査は危険だ」という噂も耳にします。

 まずバリウム検査に関しては、日本で行われた複数の研究結果からは、受診することで男女ともに死亡率が下がったという結果になっており、有効性は証明されています(※1)

 確かにバリウムが腸に詰まってしまう「腸閉塞」や、腸に穴が開く「腸管穿孔(せんこう)」というリスクも存在します。しかし、入院が必要となるレベルの合併症が起こった人は10万人中0.18人、割合にすると0.00018%にすぎません(※2)

 この割合を考えれば、バリウム検査は有効性が証明されていて、かつ合併症も少ない素晴らしい検査だと言えるでしょう。

 一方でバリウム検査とは別に、「胃カメラを受ける」という胃がん検診の選択肢も存在します。胃カメラも2014年から対策型検診に追加されましたので、非常に受けやすくなりました。この胃カメラも死亡率減少を示すデータが出ており、オススメできる検査です(※3、4)

バリウム検査と胃カメラの違いは?

 次に両者の特徴と違いについてです。まず、胃カメラは「早期胃がん」の発見に適しているといわれています。カメラで胃の壁を内側から直接目視するので、バリウム検査で見落としがちな腫瘍や、でっぱりを発見できる場合があります。

 ただ一方で、「スキルス胃がん」に関してはバリウム検査のほうが発見に適しているとも考えられます。スキルス胃がんとは、胃の壁全体にしみ込んでいくように病巣を拡大していくがんで、明らかに壁がでっぱったり、膨らんだりすることが少なく、カメラで内側から見ても変化がわからないことが多く、早期発見しにくいものです。

 しかしバリウム検査だと全体の胃の形を俯瞰して観察できるので、スキルス胃がんの発見につながる場合があります。

 バリウム検査は外から全体を俯瞰する検査である一方、胃カメラは内側から局所の早期がんを見つけやすい検査であり、お互いに違った利点があるわけです。

 2つの検査を紹介しましたが、もし「どちらかを選べ」と言われたら、個人的には「胃カメラ」をオススメします。