国際的な首脳会議が、大げさな内容の共同声明を発表して閉幕することは、ほぼ不可避の流れだ。そしてその内容はすぐに忘れ去られる。しかしジョー・バイデン米大統領、ボリス・ジョンソン英首相、スコット・モリソン豪首相が今月発表した、米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS」の創設が、すぐに忘れられることはないだろう。それは、この合意がフランスを怒らせたからではない。さらに言えば、米国のインド太平洋域への長期的関与を際立たせるものだからでもない。AUKUSは深く根差しながら柔軟性も併せ持った技術大国間の連携枠組みであり、21世紀の世界像を描き出し、米国のインド太平洋域での協力関係のモデルにもなり得るものだ。モリソン首相が最近のワシントン訪問の際、インタビューに応じ筆者に語ったところによれば、AUKUSの枠組みは、オーストラリアの人々の考えが起点になったという。何年にもわたってオーストラリアへの圧力を強めてきた中国は、昨年11月にはキャンベラ駐在の外交官の口を通じて、豪州が中国政府との関係を改善するためには、14分野の中国の不満を解消しなければならないと警告した。この中で中国側は、豪州が取るべき措置として、「反中国」的な研究への資金援助の停止、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生源に関する世界保健機関(WHO)のより徹底した調査を求めるような挑発的行動の抑制、中国による豪州への戦略的投資に反対する動きの停止、民間メディアによる中国関連の「非友好的」ニュース報道の阻止などを挙げた。