商品価格の高騰と資源高の“二重苦”、急速な脱炭素が日本の製造業を襲う非鉄金属の最大生産国である中国では、脱炭素に向けて石炭火力発電所の稼働を抑制したことにより、幅広いエリアで電力不足が発生している Photo:Bloomberg/gettyimages

金属シリコンやアルミニウムなど商品価格が高騰し、石炭や天然ガスといった資源価格も上昇している。いずれも脱炭素に向けた急速な動きが、価格高騰を招いたといえる。商品価格の高騰と資源高の“二重苦”が、日本の製造業を直撃しそうだ。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

中国が脱炭素へ急旋回
電力不足で非鉄金属に供給不安

 日本の製造業の受難は、隣国・中国から始まった。世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国の中国が、脱炭素に向けて急旋回していることがトリガーとなっている。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると、2030年までにCO2排出量をピークアウトさせるという目標の実現に向けて、中国政府は今年8月、地方政府に対してあらかじめ定めたエネルギー消費量の削減目標を順守するよう警告した。

 警告を受け、製造業が集積する広東省や江蘇省などでは、CO2排出量の多い石炭火力発電所の稼働が抑制され、電力不足に陥った。これにより、米アップルや米テスラ向けの部品を生産する台湾の乙盛精密工業をはじめ、日系企業を含む多くの工場が、電力供給を制限されて操業停止に追い込まれている。

 さらに川上の素材レベルでも金属シリコンや金属マグネシウム、アルミニウムの世界最大の生産地である雲南省も電力供給の制限対象となり、生産工場も操業停止を余儀なくされた。

 これにより、非鉄金属の供給不安が広がり、価格が高騰。非鉄金属業界は、上を下への大騒ぎとなっている。