同紙によれば、7月の夕食会で「ファイブアイズのネットワークに、日本やドイツも含める」といった会話も行われたという。

 2018年当時、米中は貿易戦争の真っただ中にあった。米国は中国のハイテク企業の攻撃を開始し、同年4月には通信設備および通信端末の開発を行うZTE(中興通訊)がやり玉に挙がっていた。

 内部事情に詳しい人物によれば、「孟氏はいつかわが身に災いが降りかかるかもしれないと、米国を避ける形で用心深く世界各国を移動していた」という。だが同年12月1日、バンクーバー国際空港でついに孟氏は逮捕される。

 中国側がこの事件を、英国のHSBC、さらには米国、カナダまで巻き込んだ「地政学的な罠」であり「政治的迫害」だとするのはこうした理由からだった。

米国が見せた中国への歩み寄り

 一方で、孟氏は米司法省との司法取引において、起訴猶予合意書に表記された「陳述書」の内容を認めた。陳述書には「孟氏はイランにおける事業は厳格な法律順守の上で行っているとしたが、真実ではなく、イランを拠点としたスカイコムの運営は米国財務省のイラン取引と制裁措置に違反した」とある。

 孟氏はこの「陳述書」の内容を認めながらも「無罪」を主張しているわけだが、その一方で、米国と中国は孟氏を挟みながら、互いに妥協点を模索しあっていたかのようにも見える。

 釈放のきっかけとなったのは、2021年7月のシャーマン米国務副長官の訪中だった。このとき、中国側はある要求を提示していた。「二つのリスト」と呼ばれる米国に対する要求は、「米国の対中政策と言行を改めること」と「中国が重大な関心を持つ個別案件」について書かれており、前者には「孟晩舟氏の米国への引き渡しの取り消し」が含まれていた。

 8月末から9月にかけてジョン・ケリー気候変動担当大統領特使が訪中した際も、中国側は「二つのリスト」を提出し、孟氏の釈放を要求した。

 孟氏の釈放は、米国が中国の要求の一部をのんだという形になった。米ブルームバーグは9月25日、「米国は、ファーウェイ最高幹部の釈放という中国の主要な要求の一つに応え、より良い関係への道を開くだろう」とかなり前向きに報じた。

 国際情勢に詳しい中国出身の私大教授は「米中間の軋轢や対立軸はこの事件にとどまらない。中国では雪解けとなる“転換点の扉”が開きはじめたという見方が強い」と慎重だ。今後の米中関係の先行きにさらなる注目が集まりそうだ。