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ファーウェイが米国の制裁で受けた影響は、半導体だけではない。米グーグルのスマートフォン向けソフトウエアも利用できなくなっている。特集『半導体の地政学』(全8回)の#5では、代替ソフトの開発を迫られたファーウェイの今後を展望する。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)
ハードウエアは満点!でも…
最新機種から透ける難局
2020年6月2日、中国の通信機器・端末大手ファーウェイの日本市場新製品発表会が開催された。スマートフォン、パソコン、タブレット、イヤホンの計10製品が一気に発表される、盛りだくさんの発表会となった。
目玉はフラッグシップとなるスマートフォンP40 Pro 5Gだ。価格は税別10万8800円。処理速度など主要性能を決定づけるSoC(システム・オン・チップ)には自社開発のKirin990 5Gを搭載している。昨年発売のP30 Proに搭載されたKirin980と比べ、CPU(中央演算処理装置)で23%、GPU(画像処理半導体)で39%も高速化した。AI(人工知能)の処理速度に関わるNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)に至っては460%も性能が向上した。

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さらに圧巻なのがカメラ性能だ。イメージセンサーは1/1.28インチと、スマホでは世界最大サイズを誇る。より多くの光を取り込めるため、画質や暗所性能の向上が期待できる。スマホの性能を評価する海外ウェブサイト「DXOMARK」のランキングで、P40 Proは128点で1位を獲得している。ライバルとなる韓国サムスン電子のGalaxy S20 Ultraは122点。米アップルのiPhone11 Pro Maxは117点と引き離されている。
そして、ミドルレンジ機として発表されたP40 lite 5Gも話題となりそうだ。税別3万9800円の低価格ながら、日本の5G周波数帯に対応しているほか、6000万画素のメインカメラを含むクアッド(4眼)カメラを搭載している。急速充電対応や6GBのメモリなど、ミドルハイ級の性能に5Gがついての低価格となれば、コストパフォーマンスでは群を抜いている。
ハードウエアは満点の出来だが、問題はソフトウエアだ。ファーウェイは19年5月に米国のエンティティリストに掲載された結果、米企業から部品やサービスを調達することができなくなった。そのため、新発売のスマホにはGmailなどのアプリや機能の集合体である「グーグルモバイルサービス(GMS)」が搭載されていない。
今や世界中のほとんどの国で米グーグルのサービスは必需品となっている。いかに優れたハードウエアがあっても、グーグルの基本的な機能が使えないとあっては魅力半減だ。その影響はすでに販売実績に表れている。ファーウェイのスマホ出荷台数は19年に前年比3460万台増の2億4060万台を記録したが、その伸びは中国市場で稼ぎ出したもの。中国以外の市場では、1億0100万台から1億台へと微減している。