私たちの生活には、いろいろなところで神様の存在を感じられることがあります。身近なところでは、「初詣」。受験生なら「合格祈願」。ビジネスパーソンなら「商売繁盛」。名だたる経営者も、日本の歴史をつくった戦国大名や歴代天皇も、神様を信仰し、力を借りて成功を収めてきました。漫画やゲームのキャラクター名でつかわれていることもあります。もしかしたら、ヒットの要因は、神様のご利益かもしれませんね。
日本には、八百万(やおよろず)の神様がいると言われています。膨大な神様の中から100項目にわたって紹介する新刊『最強の神様100』には、古代から現代まで、めちゃくちゃ力のある神様が登場します。最強クラスの神様なので、ご利益も多種多様。
前回の書き下ろし記事に登場した神様・ウカノミタマ。ご利益は衣食住のサポートです。いつの世も必要とされている神様かもしれません。それもそのはず。祭られている神社数はナンバーワン。知っておいて損はないでしょう。

【全国に三万社以上】お社の数ナンバーワンの神様とは?Photo: Adobe Stock

「狐じゃなくお米です」
食べ物と商売の神お稲荷さん

【全国に三万社以上】お社の数ナンバーワンの神様とは?ウカノミタマ
イラスト/朝倉千夏

 お稲荷さんと親しまれる我々に最も身近な神ウカノミタマは、古事記では宇迦之御魂、日本書紀では倉稲魂と表します。「お稲荷さんって狐ですよね」と言われますが、稲荷なので稲です。「宇迦」は食物、特に稲のこと。その稲の神の使いがお狐さんで、狐が田畑に現れると、ウカノミタマが来る前触れとされていました。

 ご利益は衣食住のサポートです。稲から収穫する米は豊かさの象徴で、稲の神・食べ物の神として、広く信仰されたのですが、時代を経て、神としての性格が変わります。

 具体的には、「お米の神」から「お金の神」へ変化しました。かつて武士の給料はお米の生産量で表しましたが、現代の給料はお金です。生活の中心がお米からお金に変化し、ご利益もお米を得ることから、お金を得ることに変化したわけですね。

 ウカノミタマは衣食住のサポートをするために、我々に現実的な対応力をつけるよう促してくれます。稲荷は「意・成る」で、お稲荷さんの神社では具体的な意を伝えるのも現実的な対応力をつける訓練です。「○○が欲しい」では、「欲しい意」が成ります。つまり、欲しがる気持ちが強くなるだけ。「○○のために、△△します」とお伝えしてみてください。△△の実行がスムーズになるでしょう。

 ウカノミタマを信仰したのが、秦の始皇帝をルーツに持つ渡来系氏族・秦氏です。養蚕(ようさん)、機(はた)織り、農耕、酒造、工芸などの高度な技術者集団で、平安京や長岡京をつくりました。秦氏の祖霊を祭る私的な神社として始まったのが、京都市伏見区の伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)。全国に三万社以上あるお稲荷さんの総本宮で、お社の数だけなら、八幡神より多く日本一です。

 平安仏教のスーパースター弘法大師・空海は伏見稲荷大社と関係が深く、空海の真言宗総本山・東寺の建設では、木材を伏見の稲荷山より調達しました。秦氏の私的なお社は、東寺の守護神として真言密教の拡大をサポートしました。

【主なご利益】金運向上、五穀豊穣、技芸上達

【こんな人にオススメ!】
より豊かな暮らしを手に入れたい人。明確な目標がある人

*本原稿は、八木龍平著『最強の神様100』からの抜粋し、再編集したものです。