(3)考察マニアも満足できる仕掛け

 ここまで『イカゲーム』の「わかりやすさ」を強調してきたが、もちろんそれだけではない。考察マニアたちを夢中にさせる仕掛けも、ちりばめられている。

 特に、ゲーム終了後の主人公のある変化について、ネット上ではさまざまな考察が行われている。個人的にはキリスト教と結びつけた考察が面白く感じた。韓国では人口の3〜4割をキリスト教徒が占めるといわれ、作品中にもキリスト教の布教シーンがある。

 また、言うまでもなく『イカゲーム』は格差社会を痛烈に風刺した作品でもある。脱北者や外国人労働者、被虐待児が登場するし、力の弱い(労働力のない)者や女性が排除されやすい現状への風刺もある。2020年のアカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)のテーマも格差社会であったが、社会問題への問題提起は見る側の余韻を深くさせ、語りがいを持たせる。

 伏線を確認するため、完走した後、もう1回最初から見直してみようと思う人も多いだろう。

 ちなみに、すでに視聴した方は、作品内である電話番号が提示されるのを覚えているだろう。この番号が韓国内で実際に使われている番号で、持ち主の女性の元に「ゲームで遊びたい」という電話が殺到したことをBBCニュースが伝えている。

 女性は、制作側から提示された補償金500万ウォン(約50万円)の受け取りを拒否したとも伝えられている。話題作りではと勘繰りたくなるが、ともあれ『イカゲーム』が全世界でヒット中なのは間違いない。未見の方には秋の夜長に、ぜひおすすめしたい。