2021年4月、高年齢者雇用安定法の改正で70歳までの就労確保が企業の努力義務となった。が、会社勤めが安泰になったわけでは決してない。会社に残るにしても、外へ出るにしても、「定年」という節目に向けての準備は必要だ。女性も男性と同様、定年やセカンドキャリアに向き合っていかなければならないが、男性とは異なる、女性ならではの「7つの壁」が待ち受けている。今回は前編をお届けする。(Next Story代表 西村美奈子)
男性にあって女性にない
「オールド・ボーイズ・ネットワーク」
「オールド・ボーイズ・ネットワーク」という言葉をご存じだろうか?男性が持つ社内外の人脈のことで、情報交換やお互いの便宜を図ったりする、伝統的な男性中心社会で長年築かれてきた人的ネットワークを指す言葉だ。
ある日突然、先輩がやってきて、「おまえ、そろそろ定年じゃないの?どうするの?この先、何か決まってるのか?」と、定年後の再就職先の話を持ってきたり、酒の席に呼び出して相談に乗ってくれたりする。
男性にはこのような脈々とした「縦のつながり」があるけれど、女性にはなかなかそういうネットワークがない。そもそも定年を迎えた先輩女性が圧倒的にまだ少ない。女性の多い職場を除き、男性中心の組織で孤軍奮闘してきた女性には縦のつながりだけでなく、キャリアの話ができるような横のネットワークも乏しかったりする。
女性たちは、数少ない情報の中で自身の定年に向き合っていかなくてはならない。ある程度の規模の会社は、人事や総務が「定年後に向けての説明会」を開催するけれど、どうしたって男性が中心である。
働くミドル・シニア女性には、男性にはない「7つの壁」が待ち受けている。その一つめが、セカンドキャリア構築のための人的ネットワークの貧弱さだ。
二つめの壁は、女性のほうが犠牲にしてきたものが大きい分、そして仕事に「やりがい」を重視してきた分、定年による「喪失感」が大きいという壁である。