栄養ドリンクのCMから「疲労回復」の言葉が消えたことにお気付きだろうか?これは疲労の原因物質が発見され、研究が飛躍的に進展したからだという。この大発見を成し遂げた研究チームを率いる近藤一博教授に、話を聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
栄養ドリンクCMの表現が
ちょっと遠回しな言い方になったワケ
テレビCMでさりげなく起きている異変にお気付きだろうか。以前なら、栄養ドリンクのCMで必ずアピールされていた「疲労回復」という言葉が消え、代わって「疲労感の軽減」というちょっと遠回しな言い方が主流になっているのだ。
異変が起きた理由は明快。「疲労研究」がダイナミックに進展したからだ。その進展ぶりはまるで宇宙戦艦ヤマトのワープのような一足飛びで、従来の常識を覆してしまった。
簡単に言うと、
・疲労の原因物質が発見された
・「疲労感」と「労働や運動による生理的疲労」からなる疲労のメカニズムが解明され、従来「疲労回復に効果がある」と思われていた物質のほとんどは、「疲労感を軽減させる物質であり、疲労回復効果はない」ことが分かった
・疲労を客観的に測る技術が発明された
といった “世界初”の快挙が、立て続けに達成されたのだ。
おかげで疲労研究は急進展し、今や疲労の枠を超え、「うつ病」の領域でもにわかには信じがたい大発見がなされるに至った。
ただ、世の中はそのスピードについていけていない。変わったのはCMの言葉だけ、ネット上では現在も、従来の学説が書き換えられることなく掲載され続けている。
大発見をしたのは、近藤一博教授率いる東京慈恵会医科大学ウイルス学講座の研究チームだ。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている昨今、ウイルスといえば感染症だが、実は疲労やうつ病にも大きく関与しているという。近藤教授に話を聞いた。