米連邦準備制度理事会(FRB)高官による金融取引の発覚は、中銀に対する信認問題に発展した。だが、来年2月に任期を迎えるジェローム・パウエル議長の再任については、可能性は下がったものの、今のところ完全に道が断たれたわけではなさそうだ。
パウエル氏(共和党員)は次期議長の最有力候補だが、地区連銀総裁2人の金融取引問題を受けて、再任されるかどうか見通せない状況に陥った。すでにパウエル氏続投に反対を唱えていた民主党左派にさらなる攻撃の口実を与えてしまったためだ。FRB高官の金融取引については先月、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が他社に先駆けて報じた。
足元の経済指標はインフレ圧力の広がりを示唆しており、新型コロナウイルス禍を受けて昨年導入した金融刺激策の解除に関する決定をさらに難しくしそうだ。ジョー・バイデン米大統領は、こうした状況の中で次期FRB議長の人事を決定することになる。
SGHマクロ・アドバイザーズのチーフ米国エコノミスト、ティム・デュイ氏は顧客ノートで「そもそも手続きに時間のかかる(ホワイトハウスの人事)制度を金融取引スキャンダルがさらに狂わせた」と述べている。「左派グループはパウエル氏のあら探しをしており、これを見つけたと考えている」