衆議院が11月16日午後、解散され、12月4日公示、16日投開票の日程で選挙戦に突入した。史上最多の政党乱立選挙の様相だが、自民と公明による連立政権の誕生が有力視される。一方、首相の野田佳彦が奇襲で反転攻勢を強め、第三極の動きも予断を許さない。(文/政治コラムニスト、後藤謙次)
選挙後も続く「衆参ねじれ」の混乱
本格政権の誕生は来年7月以降
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織田信長の桶狭間の戦いか、それとも旧日本軍の真珠湾攻撃なのか。14日の党首討論での首相、野田佳彦の奇襲攻撃が衆院選の情勢を大きく変えつつある。
「16日に解散する。やりましょう」
真正面に座る自民党総裁の安倍晋三を見下ろしながら言い放った。虚を突かれた安倍の視線が宙に浮く。野田は追い打ちをかけるようにこう締めくくった。
「技術論ばかりで覚悟のない自民党に政権は戻さない」
「近いうち解散発言」で「うそつき呼ばわり」され、ズルズルと後ずさりを続けていた野田に生気が戻った瞬間だった。起死回生ともいえる野田の反撃はその後の各メディアの世論調査に明確に表れた。政党支持率で民主党支持が増え、自民党がやや数字を落とす調査も散見され始めた。
選挙前の世論調査の重要なポイントとして、数字のほかにトレンドがある。上向きか、下向きかによって勝敗が大きく左右されるからだ。その点で野田が先手を打ったのが奏功しているといっていい。
野田はこの一撃を放つと、次々と自民党との差別化路線を鮮明に打ち出す。
「世襲の禁止」はその象徴だ。自民党は安倍以下、幹事長の石破茂、総務会長の細田博之、政調会長の甘利明ら執行部の大半が世襲政治家。さらに今回の選挙でも元首相の福田康夫、元幹事長の中川秀直、武部勤ら引退する実力者の多くの息子を公認候補にしている。そこを容赦なく突き、「世襲禁止に例外はない」と語気を強めた。