国外利用も想定する
デジタル人民元
今回から日米欧中の4大経済圏におけるリテールCBDCの検討状況について、現時点で入手可能な情報に照らしながら紹介したい。各国のCBDCへのスタンスを一言で表せば、デジタル人民元の開発を「風」のようなスピードで進める中国、「林」のような静けさで概念実証を進める日本、ユーロ域内の中央銀行が民間金融機関を巻き込みながら「火」のような勢いで成果を披露し競い合う欧州、地区連銀を中心に独自の実証実験を進めながらも「山」のごとく構える米国――と例えられよう。まずは中国デジタル人民元を巡る動きである。
中国人民銀行(人民銀行)では、デジタル人民元の狙いとして「中国経済のデジタル化の推進」「金融包摂の拡大」「金融・決済システムの効率化」を挙げている。しかし、グローバルステーブルコインを巡る動きや、米ドルの通貨覇権への対抗といった側面を強く意識しており、デジタル人民元の実現に向けた取り組みを足元で加速させている。昨年からは、上海などの大都市のほか、2022年北京冬季オリンピック会場予定地区を含めた「10+1」と呼ばれるエリアでさまざまな試験運用を進めており、デジタル人民元の使い勝手や課題の炙り出しを行っている。これらの取り組みを通じて、デジタル人民元の具体的なデザインについても詳細が明らかになってきている。