「日本には現在、暗号資産(仮想通貨)を明示的に規制する法制度があります。NFT(Non- Fungible Token、非代替性トークン)についてはそれがなく、だからこそ、さまざまなビジネスが花開きつつあるとも言えるでしょう。ただし、現行の法規制の中にも地雷が潜んでいます。それを踏んでしまったらせっかくの花がしぼむ可能性もあるのです」
こう話すのは、一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)のアドバイザーを務める弁護士で、『NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来』(朝日新聞出版)の共同代表編著者、増田雅史さん。
NFTビジネスの成長のためには、事業者が率先してルール作りを進める必要があるとも話す。NFTには法制度上、どんな論点があるのか。ビジネスサイドの現状も含め、解説してもらった。
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NFTの法規制は「地図」がない状態
私たち企業法務弁護士は、どうやったら日本の法制度を守りながら国内でこれまでにない新規ビジネスを展開できるか、という部分のいわばガイド役も務めています。
そのニーズがいま最も高いビジネス分野の一つがNFTでしょう。ブロックチェーン技術を活用するNFTは、その概念自体が新しいものなので、明示的な法律はもちろん、行政指導や訴訟などの前例もなく、その取引がどのように法解釈されるか、またその事業にはどんな法規制が適用されるのか、事業者にとってはかなり不明確です。だから、NFT関連の事業化にトライしたくても「何かの法規制に阻まれるのではないか」と心配し、なかなか一歩踏み出せずにいる。そこを解きほぐすのが企業法務弁護士の重要な役割と言えます。
実際、基礎知識的な事柄に対する関係者のニーズは高く、私が2021年4月にNFTの法制上の論点をブログ記事として公開したところ、初日だけで3000件ものアクセスが集まりました。