『こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる』魚谷雅彦[著]定価1575円(税込) |
本書の著者は、日本コカ・コーラの前社長で、現在は会長の魚谷雅彦さんです。マーケティングに携わっている方にはお馴染みでしょうが、魚谷さんと言えば、コカ・コーラで「ジョージア」「爽健美茶」などのヒット商品を手がけた伝説のマーケターであり、「Mr.コカ・コーラ」と呼ばれています。本書は、そんな魚谷さんがご自身の経験をもとに、マーケティングの本質とは何かを説かれています。
本書を編集しながら、改めて「コカ・コーラ」と向き合うことになりました。「自分にとってコカ・コーラとはどんな存在だったかな」と思い浮かべてみると、これほど身近なブランドってないんじゃないかと思いました。正直に言うと、僕は特にコカ・コーラフリークではありませんでした。でもあの赤い文字やビンの形、テレビCMでの爽快感など、無意識のうちにコカ・コーラの醸し出す雰囲気が、自分の中に浸透しているのです。
これをマーケティングやブランドとして捉えた場合、化け物のような巨大な存在だと改めて実感しました。日本の企業で活躍するマーケターに、コカ・コーラ社の出身者が多く、いわば「マーケターの登竜門」的な企業になっているのも、頷けます。
本書ができるきっかけは、ちょうど3年前『外資系トップの仕事力』という書籍の登場人物のお一人として、魚谷さんにインタビューさせていただいたことです。
この時、魚谷さんにいただいたインタビュー時間は1時間半というお約束でしたが、何と3時間もインタビューに応じていただきました。話がお上手な上にサービス精神溢れる魚谷さんは、聞き手の僕らを120%満足させようとするかの対応をして下さいます。また「スカッとさわやか」という同社のCMのような、実に爽快な印象を残される方として強く心に残りました。
このインタビューがきっかけで、マーケティングの極意を書いていただいたのが本書です。僕らが知る飯島直子さん出演の「ジョージア」のCMの制作プロセスや、「爽健美茶」「紅茶花伝」などの誕生秘話があますところなく紹介されているとともに、そこには、マーケターとしての真剣勝負が語られています。
どのエピソードにも共通するのが、最後まであきらめない執念のような粘りです。とことん消費者のことを考え、最後の最後までやり抜く姿勢は著者である魚谷さんの、本当の凄さなのかもしれませ。
余談ですが、そんな魚谷さんは本書の執筆にもその片鱗を存分に発揮されました。何度も原稿に手を加えられ、締め切りのギリギリまで(あるいはやや過ぎてまで)、原稿と格闘されました。そのため編集作業は、最後は綱渡りのスケジュールとなりましたが、著者らしい本になりました。
印象的だったのは、「ジョージア 明日がある」キャンペーンでの話しです。詳しくは本書をお読みいただきたいのですが、社会を動かす仕事がこんな身近なところにある、と本書の原稿を読みながら、一読者として感動しました。マーケティングを本業としていない読者の方にも、仕事の醍醐味を考える上で、是非ご一読いただければ幸いです。
(編集担当:岩佐文夫)
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