なぜ考え抜く力が必要なのか
『自分の答えのつくりかた―INDEPENDENT MIND』渡辺健介[著]定価1680円(税込) |
私たちには、直感という素晴らしい才能が備わっています。
直感があるおかげで、ゼロから理詰めで考えを積み上げていかなくても、突然のひらめきで「答えとなりうるもの」に直接たどりつけることがあります。
しかし、直感は常に正しい答えを示してくれるとは限りません。間違っていることも案外多いのです。
その理由は、私たち人間の持っている、いくつかの性質によります。
例えば、間違った情報や限られた情報を基に決断してしまう。押さえておくべき重要な問いを、見過ごしてしまう、流してしまう。自分の持っている知識や経験、想像力とらわれて視野を広げられない。感情のおもむくままに考えを曲げてしまう。判断を曇らせてしまう……。
こうしたバイアスが直感をゆがめ、その結果、間違った方向に進むことになってしまうのです。
しかし、直感という素晴しい贈り物をあるべき姿で活かす方法はあります。
まず、自ら考え抜くこと。考えたことを、客観的に見て「つっこみ」を入れること。そうした批判的思考の方法を学べば、よりよい判断が、より確実にできるようになるのです。
これは、トレーニングさえすれば、誰にでも身につけられるものです。本書では、主人公の赤い魚の中学生ピンキーの物語を通して、どこで何を学ぶべきかを日常の風景の中でご紹介します。
価値観を築き上げ、磨く
とはいえ、何が正しいかを判断するためには、論理だけでなく価値観も必要です。自分が何をよしとするか、何を美しいと考えるか、という価値観によって、自ずと答えが違ってくるからです。
価値観とは、何もしないで備わるものではありません。多くの人が価値観だと思っていることのほとんどは、単に自分が生きている時代、育った環境の常識や習慣だったりします。つまり、前提を疑い、意識して築いていかなければ、時代やその場の雰囲気に飲み込まれてしまいやすいということです。
さらには、価値観は黒白はっきりつくような単純なものではありません。何が正しいのか、何が間違っているのか、何が美しいのか……そこには無数のニュアンスがあり、さまざまな色、濃淡が存在しうるのです。