また「同胞を日本軍が攻撃」するのは、韓国の国民感情に触れかねないから、韓国軍の発言力が高まっている米韓連合司令部が「日本の攻撃参加は見合わせてほしい」という可能性は十分考えられる。

 湾岸戦争で米国などが「イスラエルが多国籍軍に加わればアラブ諸国が反発し結束を乱す」としてイスラエルの参戦を拒否したのと同様になりかねない。

 韓国と北朝鮮のGDP比率はすでに100対1の大差があるから、通常兵器による戦争では、韓国は単独でも北朝鮮を比較的短期で制圧できるだろうが、崩壊に瀕するとなれば北朝鮮は自暴自棄となり、核ミサイルを発射する公算は高い。

 韓国軍と米軍は血眼になって北朝鮮の弾道ミサイルやその指揮中枢を最優先目標として探し求めて攻撃するだろう。だが、北朝鮮が持つといわれる弾道ミサイルのうち核弾頭付きは30基とみられ、それを完全には破壊できず、北朝鮮が残存した核ミサイルを発射するリスクは残る。

 それに対し米軍が韓国などに核汚染が及ばないよう低威力の核兵器で報復する構えを示し、北朝鮮の核使用を抑止しようとしても、滅亡が迫り「死なばもろとも」の心境になった北朝鮮には効果はないだろう。「抑止戦略」は相手の理性的判断を前提にしているのだ。

戦争を具体的に
考えられない「タカ派」

 日本で「敵基地攻撃」を主張している人々は、目標の位置情報の提供を米軍に頼ることを考えている。

 しかし米軍・韓国軍が、まさに発射されようとしている弾道ミサイルを発見すれば寸刻を争って直ちに攻撃するはずだ。

 日本に位置を通知し、わざわざ手柄を譲るような悠長なことをすることはまずあり得ない。

 こんな甘い構想を抱くのは戦争を具体的に考えられない「平和ボケのタカ派」の論と言うしかない。

(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)