日本銀行が購入し保有するETF(上場投資信託)の2024年3月末時点の時価が約74兆円、含み益が約37兆円と、日本株の高騰を反映し、いずれも過去最高となった。日銀が株式を10%以上保有するのは72社に及ぶが、今後、市場に悪影響を及ぼさずに処理していく道筋は見えないままだ。(ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)
日銀のETF“含み益”は37.3兆円
10%以上保有の「大株主」は72社に
日本銀行が「量的・質的金融緩和」の一環で購入したETF(上場投資信託)の保有総額が、2024年3月末時点で74.4兆円(時価)、“含み益”は37.3兆円に達したことがニッセイ基礎研究所の試算で分かった。
今年に入り日経平均株価が初の4万円台をつけるなどの日本株市場の活況を反映して、保有総額と含み益共に過去最高となった。
日銀は3月の金融政策決定会合で、マイナス金利解除やイールドカーブコントロール(YCC)撤廃とともに、ETFの買い入れ終了を正式に表明した。
長年の異次元緩和などからの正常化に踏み出した日銀だが、金利正常化のほかに抱える難題が、「株価買い支え」策としての批判もあった、保有する巨額のETFの処理だ。
日銀がETF購入を通じて株式を間接保有し、「大株主」となっている推計保有比率をまとめたところ、ランキング1位は半導体試験装置大手のアドバンテストで、24年3月末時点の日銀の間接保有割合は発行済み株式の24.7%に達した。2位は電子部品大手のTDKで保有割合は20.1%、3位は「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの19.7%だった。
日銀の間接保有割合が20%を超える企業はアドバンテストとTDKの2社で、15%以上20%未満が14社。日銀が10%以上の株を間接保有する企業は計72社に及んだ。
また、1年前の試算『「日銀が大株主」の企業ランキング【上位100社・完全版】年535億円もの国民財産流出の大問題』では、間接保有する株式の時価総額トップはファーストリテイリングの約1.9兆円だった。
しかし今回の試算では、半導体製造装置大手の東京エレクトロンが3兆3450億円と間接保有額のトップへと浮上。ファーストリテイリングは2位となり、3位はソフトバンクグループだった。
東証株式時価総額の7.4%を占める間接保有株を今後、市場に悪影響を及ぼさない形でどのように手放し、また売却益などをどういった形で使うかのめどは立っていない。株価急騰で膨らんだ日銀が保有するETF処理の課題の大きさが改めて浮き彫りなった。
次ページでは、日銀がETF購入を通じて大株主となっている推計保有比率の上位100社のランキングと共に、市場に悪影響を及ぼさずにETFを処理する課題について深掘りする。