著名人や有名経営者から名指しで「あなたにインタビューをしてもらいたい」と声がかかるインタビュアーの宮本恵理子さん。これまでに取材した相手は延べ2万5000人以上。そんな彼女の「聞くスキル」を一冊にまとめた『行列のできるインタビュアーの聞く技術』が好評発売中です。本書の巻末には、実際に寄せられた「取材時の困った!」に宮本さんがどう対処してるのかをまとめました。本連載では、書籍の回答に大幅加筆し、取材の悩みに回答していきます。『行列のできるインタビュアーの聞く技術』と一緒に読み込めば、きっと話を聞くスキルがぐっと高まるはずです。

まったく土地勘のない分野の専門家に取材、知識不足で怒られそうPhoto: Adobe Stock

知識のない分野の専門家に取材
事前に、どこまで勉強すればいい?

質問:まったく専門外で、知識のない分野の専門家にインタビューをすることになりました。できる限り調べるつもりですが、どこまで勉強すべきなのか分かりません。浅い知識で相手を怒らせてしまわないか不安です。

回答:自分にほとんど知識がない分野の第一人者に話を聞きに行くときは緊張しますよね。「そんなことも知らないのか」と怒られたらどうしよう……と不安になってしまいます。

 でも、よく考えたら、こちらが無知であることは、相手も承知しているはずです。もしも「専門知識のある聞き手にインタビューをしてもらいたい」という前提であれば、あなたに依頼しなかったでしょう。

 そう考えると、ここは無理に背伸びをせず、精一杯、相手を理解しようと努力し、素直に質問をする。できることは、これしかありません。

 絶対にやってはいけないのは、「知ったかぶり」。分かったふりをしてその場をやり過ごしても、相槌や質問の内容に矛盾が生じて、かえって信頼を損ないかねません。

 むしろ「素人質問で恐縮ですが……」と、知識が追いついていないことを認める姿勢で向き合うほうが、相手も真剣に答えてくれます。もしかしたらその人は、専門外の人から質問される時間を新鮮に楽しんでいる可能性もあります。分からないことは、「理解できている自信がありません」と正直に伝えながら、要点を押さえて聞きましょう。

 一方で、分からない用語のすべてを聞き返していたら、いくら時間があっても足りませんし、相手をイラ立たせてしまうリスクもあります。適宜、「今の用語については後で調べておきます」などと伝えて、話の流れを切らないバランス感覚も大切です。

 繰り返しになりますが、専門性の高い部分まで、すべて理解しようとしなくて大丈夫。大切なのは、「誠意を持って、相手の言葉を理解しようと向き合う姿勢」です。

「今おっしゃったのは、こういう意味ですか?」と自分の言葉で確認しながら、話を聞くことに集中すればいいと思います。

『行列のできるインタビュアーの聞く技術』では、本記事で触れたような相手の話を聞くためのさまざまなスキル、相手の心をほぐして話をよりスムーズに聞くためのスキルを88、紹介しております。そしてこの聞く技術は、インタビューという特殊な環境ばかりではなく、営業や1on1、会議、面接、コーチング、採用、雑談などあらゆるシーンでも生かすことができます。ぜひ、本書を手に取ってみてください。

まったく土地勘のない分野の専門家に取材、知識不足で怒られそう