給与が高い一方で業績への貢献度が低い、いわゆる“働かないおじさん”をどう扱うか。日本企業が直面する問題の一つである。ただ、働かないおじさんと一口に言っても、さまざまなパターンがある。今回は事例とともに2つのパターンとその対応策を見ていこう。大きな反響を呼んだ『バリバリ働いていた人が「働かないおじさん」になってしまう根本要因』に続き、難波猛氏の著書『「働かないおじさん問題」のトリセツ』から、一部抜粋・再編集して解説する。
「元エース型」働かないおじさん
その特徴とは?
前回の記事で、期待された成果を発揮することができない「ローパフォーマー」は、WILL(「やりたいこと」や「ありたい姿」など)、MUST(「やるべきこと」や「周囲からの期待」など)、CAN(「できること」や「得意なこと」など)を円で示したときにいずれかが小さかったり、離れたりと、ズレが生じた状態に陥っていると解説しました(詳しくは『バリバリ働いていた人が「働かないおじさん」になってしまう根本要因』を参照)。
実はこれらの「ズレ方」にもさまざまなパターンがあります。今回は、比較的よくみられる「元エース型(CANのアップデート不足)」と「梯子外され型(MUSTの消滅)」について、事例を交えて説明します。
「元エース型」は、かつて会社の屋台骨を支えたエース社員が、世の中のトレンドや法律、マーケット、働き方が変わってしまったことによって、持っている能力が不要になったり、活躍しにくくなってしまったりするパターンです。
特に最近は、VUCAと呼ばれる不確実で変化が激しい時代のため、数年前の成功パターンが通用しなくなる場合もあります。
こういう人の場合、現状の理解だけでなく過去に対して決別する覚悟が必要になります。その上でやりたいこと、今後できることを一度整理してもらう。そして、所属している組織がどこに向かおうとしているのか、今現在はどこにいるのかを考えてもらい、本人へ能力やスキルのアップデート・バージョンアップを実行してもらうプロセスが必要になります。
最近では、学び直し(リカレント)や学んだことを敢えて捨てる学習棄却(アンラーニング)が注目されています。
C社では、かつて一世を風靡し、指名で仕事を受けていた社内で伝説的なデザイナーが「働かないおじさん」になったケースに悩んでいました。彼は典型的な「元エース型」になってしまっていたのです。