岸田政権が「賃上げ」実現を目指し
税制改正大綱の大枠を固める
税制は、経済をゆがめるものです。古い京都の町屋は、間口が狭くてウナギの寝床のように奥行きがあることで知られています。風情があっていいという意見もありますが、この変わった建物が増えた理由は税金です。家の間口の幅に応じて税金を徴収するようにしたところ、京都の町並みはみな間口の狭い細い長方形の建物になったというわけです。
さて、岸田政権がめざす「成長と分配」の肝いり政策の一つである賃上げに関して、企業に賃金を上げさせるための税制改正大綱の方針が固まりました。賃上げをした企業に減税のインセンティブを与え、逆に賃上げが進まない企業にはペナルティーが生まれるという内容です。
たとえば大企業の場合、従業員の給与総額を前年度から4%増やした場合、法人税の控除率をこれまでの15%から最大30%に増やしてもらえます。中小企業なら、この控除率が最大40%になります。一方で給与総額が1%以上増えない大企業には研究開発投資の一部に対して税額控除が認められないなどのペナルティーが科せられる方針です。
自民党が近くまとめる党の税制改正大綱でこれらの方針が明記され、今後決定される新しい税法に反映していくことになるのですが、この方針、穴はないのでしょうか?
そもそも賃上げ税制自体は、2013年度にスタートしているのですが、その間、日本の平均給与は上がっているとはいえません。新しい法案の穴をけん制する意味で、もし私が悪い経営者だったら、今回の方針を受けて何をするだろうか、机上で考えてみることにします。