嬉しいことも悲しいことも、
すべての経験が財産になる

 また、私自身が先輩になったとき「上に立つ者としての在り方」「新人を焦らせてはいけない」「食事やお菓子を数えるときに計算が合わない場合には、先輩として一緒に確認をする」ということを念頭に置くようになりました。私のしたミスはしてはいけない失敗ではありましたが、その経験から多くのことを学んだのです。

 OJTの時にもドリンクサービスが順調に終えられたことに安堵し、紙コップの回収の際に中にコーヒーが残っていることに気づかずカップを重ねてしまいました。その結果、コーヒーが飛び散ってお客さまのシャツに雫が飛んでしまうという失敗をしました。

 何度も頭を下げる私に「大丈夫だよ、OJTがんばってね」と優しい言葉で許してくださったお客さまのことを今でも忘れることができません。

 新人の頃は多くの人に支えられ助けられています。それを忘れず「今の自分があるのはたくさんの方のおかげ」と考えられるベテランになることで、仕事やお客さまとの向き合い方に大きな差が出ます。

 嬉しいことも悲しいこともすべての経験が財産です。接客1年生であるときに起きた出来事をしっかりと胸に刻んでおきましょう。

新人時代にやってしまった大失敗に対して、チーフが放った予想外の一言とは七條 千恵美(しちじょう・ちえみ)
株式会社GLITTER STAGE 代表取締役
1973年京都府出身。同志社大学卒業後、日本航空に入社。お客さまから多くの賞賛をいただき、さらに際立った影響力を持つ客室乗務員として「Dream Skyward優秀賞」を受賞。取締役から表彰を受ける。また、TOP VIPフライトの中でも最上級ハンドリングのフライトであった皇室チャーターフライトのメンバーに抜擢された経験を持つ。経営破綻後の2010年より2年間、客室教育訓練室のサービス教官として約1000人以上の訓練生を指導し、多くの優秀なCAを輩出。教官としての会社評価は、評価最上位に該当するS評価を受けるなど教官としても数々の実績を残す。サービスマインドの強化と身だしなみの授業は評価が高く「気づきの女王」「身だしなみ隊長」と呼ばれる。現在は、株式会社GLITTER STAGEの代表取締役として接客マナー研修や社員教育などで全国を飛び回る。「強い牽引力とわかりやすさ」には定評がある。主な著書に、『接客の一流、二流、三流』(明日香出版社)、『これだけできれば大丈夫! すぐ使える! 接客1年生』(ダイヤモンド社)がある。