手Photo by Hiroshi Kashihara

マグロの最高級ブランドとして知られる青森県の大間産クロマグロのヤミ漁獲が明るみに出た。地方の市場に大量出荷されたことを不審に思った水産庁が青森県と大間漁業協同組合に調査を指示したのだ。以前から漁獲報告より流通量が多いと噂されていた。資源保護のため国際合意に基づく漁獲制限が続く中、ヤミ漁獲に対する風当たりは強い。(経済ジャーナリスト 樫原弘志)

青森県や大間漁協には
「見て見ぬふり」の疑いも

 寿司好きにはうれしいニュースが飛び込んできた。中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)は12月7日まで開いた年次会合で、日本周辺の海でよく獲れるクロマグロの大型魚(30キロ以上)の漁獲枠を2022年から15%増やすことを決めた。水産庁が割り振る各産地の漁獲枠も来年は増える。

 だが、青森県大間町の漁業協同組合や漁師たちはこの知らせをさぞかし複雑な思いで聞いたことだろう。大間は今、一部漁師によるヤミ漁獲が発覚し、揺れに揺れている。ヤミ漁獲の規模によっては、増枠も焼け石に水ということになりかねない。大間のマグロ漁師も東京・豊洲の水産卸売会社も固唾(かたず)をのんで水産庁・青森県の調査を見守っている。

 なぜこんな事態になってしまったのか。大間町を訪れ、関係者に取材した。