自前で劇場を持つ経費は固定家賃のほかに
売上に応じて支払う「売歩(うりぶ)」もあった!

 一体、経費はどのくらいかかるのでしょうか?通常イメージするのが、毎月のテナント料、つまり家賃ですが、さらにAKB48劇場のような店舗の場合、「変動家賃」もあります。

 これは、家賃として毎月同額を支払う固定家賃のほかに「売歩(うりぶ)」といわれる売上歩合に応じた変動の家賃で、売上に連動して何パーセントかを支払います、というものです。

これはドン・キホーテだけに限りません。商業ビルのでテナントに入った場合、ほとんどこの支払いが発生します。SHIBUYA109の家主、東急もそうですし、丸井や西武などの場合も、テナントは固定家賃のほかに、一定金額を超えた売上高に対して数パーセントの変動家賃を支払う契約になっているのです。

 商業ビルの場合、大抵は駅前の一等地、立地としては申し分ありません。優良テナントが入っているSHIBUYA109のような場合には「マルキューなら、あのブランドも入っているし、行ってみよう!」と、集客にも事欠きませんので、アパレルを中心にこぞって出店を希望するという好循環も生まれています。そこでテナント側にメリットがあればこそ、家主側にもメリットがあって然るべきという考え方が出てきます。「共存共栄、儲けた時はお互い様ですよ」というものです。

 逆に、出店したものの、なかなか儲けられないテナントは、固定家賃だけでも支払うのが厳しく、即撤退ということもあります。そして人気のある商業ビルではむしろ、次から次へ新規のテナントに出店してもらうほうが良かったりするのです。

 オーナーである家主からすれば、新規出店の都度、契約手数料収入が入ることもそうですし、魅力あるテナントの誘致によって、さらなる集客力アップが期待できます。そうすれば、ビル全体の儲けの底上げを図れ、変動家賃の収入アップも目論むことが可能です。だから、オーナーは固定家賃のほかに変動家賃という強気に出られるのです。

 さて、AKB劇場に話を戻すと、固定家賃、変動家賃以外にも、通常は10ヵ月分と言われる入居費用(保証金)や、劇場に改装するための費用など「初期投資」も別途かかります。ですからつんく♂氏は出店を諦めたのでしょう。

 では、ここで、初期投資は除いて、毎日どのくらいの集客がないと赤字になるのか、具体的な数字を当てはめて計算してみましょう。