1日何人来れば赤字にならない?
“損益トントン”をシミュレーション!

 まずは観客が多くても少なくても絶対にかかってくる「固定費」を計算してみます。秋葉原にあるAKB48劇場の面積は203坪、670平方メートルです。このあたりは、1坪あたりの家賃は2万5000円が相場なので、1カ月の家賃は約500万円になります。

 また、劇場のステージを照らす光熱費、アイドルの育成費(出演料含む)や運営に携わるスタッフ人件費なども固定的に発生します。こちらをざっくり1000万円と想定すると、締めて毎月かかる「固定費」は1500万円になります。

 加えて、売上高と連動して発生する変動費です。まずチケット制作費など1枚につき100円程度。この他に“売歩(うりぶ)”といわれる変動家賃、仮に売上高の8%としましょう。チケット1枚あたり3000円ですので、変動家賃はその8%=240円となります。100円+240円なので締めて変動費は340円です。

 AKB48劇場では、通常3000円でチケットを販売しています。損益トントンにするには、その代金からチケットの印刷代や売歩などの経費(変動費)を差し引き、その残りが、AKB48劇場などの運営で毎月発生する経費(固定費)と同じだけないといけないわけです。

これを式にすると

売上高−変動費−固定費1500万円=損益トントン(=0)

となります。

 売上高は観客一人につき@3000円、変動費も観客ひとりにつき@340円ですから、2660円×観客数=1500万円で損益トントンです。

 これで観客数を求めると観客数は、1500万円÷2660円=(ほぼ)5639人となり、さらにこれを1ヵ月の営業日30日で割ると188/日。

収容人数250人のAKB48劇場では、188人もの観客を毎日集める、つまり1日1回公演だとすれば稼働率75%=(188人÷250人)でやっと損益トントンになり、儲けを出すにはさらなる集客が必要だということです。

 このように、損益トントンとなる売上高のことを「損益分岐点売上高」というのですが、まずはこれを知ることがビジネスを継続して行うためには大切なことです。これはカフェ経営のような小さなお店にも必要な会計的な視点なのです。

 さて、最初は観客が7人だったAKB48劇場です。初期段階ではどう考えても赤字です。秋元氏は、この赤字を「赤字」として考えずに将来への「初期投資」の経費として考えたと思うのですが、それだけでは経営はうまくいきません。儲けを大きくするには経費を下げるというのが鉄則だからです。

 ですから、この専用劇場を持つコストをどうにかして軽くしようと秋元氏は考えたのでしょう。そして、つんく♂氏は思いつかなかったであろう、うまい「しくみ」を取り入れたのです。この「しくみ」とは一体…(後編に続く)。

※ヒントはAKB48のメンバーが所属する芸能事務所やレーベルがバラバラだということです。

(次回は12月13日更新予定です。)


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