デンマーク創業のブロック玩具メーカーが急成長を遂げています。プラスチックのブロックだけを扱い、かつては模倣品があふれて経営危機にも直面したレゴ。しかしその後、レゴは驚異の復活を果たします。現在の売上高は玩具業界の中で世界一。ブランド信用力も世界一。『レゴ 競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方』では、レゴの強さの真髄を描きました。本連載ではレゴを知るキーパーソンに強さの理由について解説してもらいました(聞き手は蛯谷敏)。
■インタビュー1回目>「知育玩具だけじゃない!「レゴ スーパーマリオ」世界的な大ヒットのワケ」
■インタビュー2回目>「想像力や課題解決力がぐんぐん身につく!「遊びながら学ぶ」レゴの威力」
――最近は大人もレゴを手に取る人が増えています。
長谷川敦氏(以下、長谷川) 大人の中にも子どもの部分があります。大人だって、コロナ禍を経て、ずっと家にいて、私生活と仕事の区別がつきにくい状況が続きます。そんな中で、気分転換の手段としてレゴを遊ぶ人が増えました。実際、大人向けのレゴはビジネス自体も伸びていますし、我々も力を入れているエリアの1つです。
――レゴはもともと、大人向けレゴ(AFOL = Adults fan of LEGO)という強固コミュニティが存在しました。
長谷川 SNSが普及し、メディアが多様化して、個人が発信力を持つ中で、そういう人たちをブランドをどうとらえているかは重要になっていると思います。最近だと、いろいろな会社がファンを囲い込む、ファンマーケティングやコミュニティマーケティングを展開していますが、レゴはそうした言葉が生まれる前から取り組みを続けてきたとも言えます。
もっとも、レゴは最初から意図的にコミュニティでファンを囲い込もうという計画はなかったと思うんです。熱烈なファンの集まりが、結果として非常に強固なファン・ネットワークとなり、それらと有効的な関係が築けているということだと思います。
日本でも、いわゆる大人のレゴサークルは、いくつか公認しています。レゴ好きな人たちが集まって、自分たちが作った作品を披露しあう、ファンが互いに刺激を受け合う場として、盛り上がっています。
――レゴの組織としての強さはどこにありますか。
長谷川 変革することに対して非常に積極的ということでしょうか。社内では、「Kids are role models」と言って、子どもたちの物事に取り組む姿勢をお手本にしようと言っています。子どもたちは好奇心の固まりです。とにかく何でもまず試そうとします。そうした子どもたちが我々のお客さんである以上、レゴも同様の姿勢で活動していこうというわけです。
組織としては、トップダウンで何かを決めるというよりも、利害関係者とコミュニケーションを取りながら、巻き込んでいくことを大切にしています。ですから、リーダーも、強さよりも対話が求められます。
これは、デンマークの文化も影響していると聞いたことがあります。デンマークでは会社であっても対人関係がとてもフラットで、自分の上司や役職者に対しても、普通に意見をぶつけあうそうなんです。いわゆる、ピラミッド型組織とは正反対ですね。
私自身、レゴに入社して8年になりますが、毎年変革を続けている印象があります。ここで仕事をすると、年々グローバル化に向けた仕組みが整備されています。一方で、デンマークの小さな町生まれた会社の牧歌的な雰囲気も失わないように、考えながら経営しています。
レゴは非上場で、創業家が現在も主導権を持つ会社ですから、その良さや意義を毎年のリーダーシップ会議でも強調しています。重要な会議にオーナーが来て話すことの意味は、やはり創業家のカラーを大事にするという意志の表れなのだと思います。