一冊の「お金」の本が世界的に注目を集めている。『The Psychology of Money(サイコロジー・オブ・マネー)』だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムニストも務めた金融のプロが、資産形成、経済的自立のために知っておくべきお金の教訓を「人間心理」の側面から教える、これまでにない一冊である。世界43か国で刊行され、世界的ベストセラーとなった本書には、「ここ数年で最高かつ、もっとも独創的なお金の本」と高評価が集まり、Amazon.comでもすでに10000件以上のレビューが集まっている。本書の邦訳版『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』が、12月8日に発売となった。その刊行を記念して、本書の一部を特別に公開する。
投資のコツは「簡単に手放さないこと」
投資資産に思い入れを持たないことは、投資家にとって冷静で理性的であることの証明だと見なされ、名誉なことだとも思われている。
しかし、採用している戦略や保有している株式銘柄に思い入れがないと、困難に陥ったときに簡単に手を引きやすくなる。困難な状況でもその戦略を簡単には放り出さない。それが結果的に、長い目で見れば優位に立てるのである。
前述したとおり、不況時にも同じ戦略を貫くことほど、長期的に投資のパフォーマンスを上げる要因はない。リターンの割合も増えるし、一定期間にそれを獲得できる確率も高まる。過去の実績に基づけば、米国市場で利益を上げられる確率は、1日なら50%、1年なら68%、10年なら88%、20年では(現在のところ)100%になっている。ゲームに参加し続けるほど、はっきりと勝率は上がっていくのである。
好きな企業なら、悪いときも手放さない
有望だが興味のない企業に投資をするとき、うまくいっているときはそれでいいかもしれない。しかし必ず潮目が変わるときが来る。そのときに、興味のない企業の株を持ち続けることで大切な資産が減っていけば、二重の辛さを味わうことになる。この辛さから逃れようとして、その企業への投資を止め、他の企業の株に切り替えることになるだろう。
一方で、企業理念や製品、テクノロジー、運営方針など、投資対象の企業に関心があれば、必然的に訪れる悪い時期(投資収益が赤字になる、企業経営が苦境に陥るとき)にも、投資を通じてその会社を応援しているという気持ちが生まれ、辛さも和らぐ。これが、途中であきらめずに投資を継続するために必要なモチベーションとなるのだ。
(本原稿は、モーガン・ハウセル著、児島修訳『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』からの抜粋です)
ベンチャーキャピタル「コラボレーティブ・ファンド社」のパートナー。投資アドバイスメディア「モトリーフル」、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の元コラムニスト。
米国ビジネス編集者・ライター協会Best in Business賞を2度受賞、ニューヨーク・タイムズ紙Sidney賞受賞。妻、2人の子どもとシアトルに在住。