厳しい措置を通じて新型コロナウイルス感染者をほぼゼロ近くに抑え込んできたオーストラリアが、ここにきて感染者の急増にも動じない戦略にかじを切っている。市民もこれにいずれ慣れると踏んでいるようだ。変異株「オミクロン株」の流行で、新たな制限措置を導入する動きが世界的に広がる中で、豪州のアプローチは極めて対照的だ。豪政府はこのほど、コロナワクチンの接種を条件に、技能労働者の移民や留学生に対する入国制限を解除した。主要都市シドニーでは、当局が室内でのマスク着用義務を撤廃。入り口でのチェックが概ね不要になり、ワクチン未接種者でも大半の場所について自由に出入り可能になった。保健当局の予測では、豪州では1日当たりの感染者が間もなく2万5000人に達する見通しだ。コロナ禍を通じて死者の累計が約2100人にとどまるオーストラリアのような国にとって、ここまでの感染急増に対する市民の思考パターンを変える必要がある。他方、米国の累計死者数は80万人超だ(米ジョンズ・ホプキンス大学調べ)。