実力以上の結果を出し、人より抜きん出た存在になるには、努力と能力だけでは足りない。周囲の人の認識を自分の味方にし、だれから見ても魅力的な人物になる力「EDGE」(エッジ)を手にすることで、思いどおりの人生を歩むことができる。全米が大注目するハーバードビジネススクール教授、待望の書『ハーバードの人の心をつかむ力』から特別に一部を公開する。
「報われる努力」の秘訣
Effort(エフォート)
断固とした決意のもとでの努力、奮闘。
本書ではこれまで、努力と、がんばりの違いについて漠然としか説明してこなかった。そして私は、がんばりは不可欠だと述べてきた。私は心からそう信じている。と同時に、がんばったからといって必ずしも報われるわけではないことにも触れてきた―がんばり「プラス」が必要なのだ、と。
がんばれ、努力しろ。だれかにそう言うのが悪い助言であるとは思わない。ただ、「がんばる」こと、「努力する」ことは基本中の基本であって、だれにでもわかる。それに就職活動中の人や、もっと報酬を得たい、もっと評価されたいと思っている人に、努力しろ、がんばれと言ったところで、たいして役には立たないだろう。
それなのに、目標を達成するにはとにかくがんばるしかないと言う人のなんと多いことか。「とにかく歯を食いしばってがんばりなさい。夢を追い続けなさい。いつか努力が報われるから」
だが実際には、望みの結果を手中にできた理由は人によってさまざまであることが、私たちにはよくわかっている。運も、その1つだ。コネがあるなど、特権に恵まれているのも、その1つ。そして、エッジもその1つだ。相手を豊かにして(Enrich)、楽しませ(Delight)、誘導し(Guide)、みずから努力を続けて(Effort)、あなたのEDGEをつくるのだ。
本書をここまでお読みになったみなさんはもう、みずからエッジをつくっていけば、がんばりが報われることをよく理解しているだろう。たとえ世の中には特権を享受している人がいて、自分は不利な立場に置かれ、偏見を向けられていても、エッジをつくることは可能なのだ。
あなたが相手を豊かにする方法、価値をもたらす方法を実際に提示できたとき、相手を楽しませて、心の扉をひらいてもらったとき、自分に対する認識を別の方向に誘導できたとき―そんなときようやく、あなたの努力とがんばりが実を結びはじめる。旧態依然とした考えがはびこる社会で、不利な立場に追い込まれたように思えることはあるだろうし、ジェンダー、人種、民族、年齢、貧富、階級といったものを基盤に偏見をもたれることもあるだろう。それでも、そうした不利を逆手にとって状況を一変させ、有利な方向にもっていくことができるのだ。
努力によって、あなたは自分のエッジを強化すべきだ。つまり、あなたが相手を豊かにし、楽しませ、誘導できるように努力するのだ。そのためには、これまで経験してきた苦労、ぶつかってきた壁、こうむってきた不利益をいったん忘れなければならない。辛酸をなめてきたという恨みや憤りを、みずから手放すのだ。
本書では、さまざまな面で不利な立場に置かれ、過小評価され、偏見にさらされるなか、努力を重ねて成功をおさめてきた人たちのストーリーをいくつも紹介してきた。どんな困難に直面しても、エッジをつくりだしてきた人たちの話を。それに逆境を乗り越え、自分に有利になる方向へと周囲の人たちを誘導してきた私の体験も紹介した。
エッジをつくりだすのは、けっして一回きりの努力ではない。あなたのエッジも、私のエッジも、常に微調整を加えながら進化させるのだ。その結果、独自の個性と能力がいっそう花開くのだから。
(本原稿は『ハーバードの人の心をつかむ力』〔ローラ・ファン著、栗木さつき訳〕から抜粋、編集したものです)