実力以上の結果を出し、人より抜きん出た存在になるには、努力と能力だけでは足りない。周囲の人の認識を自分の味方にし、だれから見ても魅力的な人物になる力「EDGE」(エッジ)を手にすることで、思いどおりの人生を歩むことができる。全米が大注目するハーバードビジネススクール教授、待望の書『ハーバードの人の心をつかむ力』から特別に一部を公開する。

ハーバードで教える「成功する人、しない人」決定的な差Photo: Adobe Stock

成功への道を切り拓く力とは

 先日、同僚からこんな話を聞いた。ある人物が、スペースXとテスラの創業者、かのイーロン・マスクと直接会うチャンスをものにしたという。面談の約束をとりつけるだけでも至難の業だというのに。なにしろ彼は母校ペンシルバニア大学ウォートン・スクールに対してさえ、電話をよこすのは1年に1度にしてくれと言い、その電話にさえ、大抵応じないというのだから。

 本書を執筆している時点で、イーロンの純資産は約202億ドル。控えめに計算したとしても、彼の1分間には数千ドルもの価値がある。だが、この話のいちばんおもしろいところは、どこの馬の骨ともわからない無名の人間がイーロンとの面談にこぎつけた点ではない。

 なんと、その面談が30秒も続かなかったことだ。イーロンは相手の顔を見るなり、「ノー。出ていってくれ」と言い放ったという。

 この話からは、イーロンほどの地位の人物には、会ってもらうツテをたどるだけでも大変なことがよくわかる(そのうえ、なんとか面談にこぎつけたとしても、話を聞いてもらえるとはかぎらない)。権力をもつ富豪は横柄な態度をとってでも、自分のキャリアに集中し、脇目もふらずに邁進しなければならないのだ。

 イーロンのような傑物の時間と才能は、外部から邪魔が入らないよう堅く守られている。見知らぬ人物と会ったおかげで、すばらしい成果が得られる可能性があるとしても、話を聞く時間などないに等しいのだ。

 さて、この逸話を私に教えてくれた同僚は、最後にこう付け加えた。「ま、この話が実話かどうかは、定かじゃないけどね」

 そこで、私はこう応じた。「それ、実話よ」と。

 だって、イーロン・マスクのオフィスから追いだされかけたのは、この私なのだから。

「悲惨な30秒」になるはずだったイーロンとの面談

 イーロンと会えるようになったのは、偶然の産物だった。イーロンがある大学の学位授与式でスピーチをしたとき、たまたま聴衆のなかにバイロンという私の友人がいた。そして、バイロンは幸運にも、この億万長者の連絡先を入手したのである。その後、バイロンは首尾よくイーロンと面談する約束をとりつけ、親切なことに、私を同行させてくれた。

 こうして私はスペースXのオフィスに出向き、イーロンが会ってくれるのを待つ幸運に恵まれたのだ。バイロンは、私が民間の宇宙ビジネスに関するリサーチに取り組んでいるのを知っていた。宇宙ビジネスで起業したスタートアップは、事業を展開するうちに、大手企業の壁にぶちあたる。アメリカ政府やNASAに行く手を阻まれることさえある。そこで私たちは、民間宇宙旅行事業の将来について彼の考えを聞きたいと考えたのだ。

 イーロンと直接会える機会などめったにない。だからバイロンと私は抜かりなく準備を整えていた。ところが、そうした私たちの努力が水の泡になろうとしていた。前述したように、彼のオフィスから出ていけと言われたのだ。

 でも、私たちは出ていかなかった。友人が聞いた噂話は、この点だけ、実際とは異なっていた。たしかに、イーロンは私たちをオフィスから追い出そうとした。

 けれど、私たちはそこで落ち着きを失わずに、なんとか踏ん張った。そして、たった30秒で悲惨な結末を迎えそうになった面談を、1時間にもわたる活気ある話し合いに変えることができたのである。