「この株は売り? それとも買い?」「儲かる株はどっち?」まるで投資シミュレーションのようにクイズを解きながら「株で勝つ技術」を身につける画期的な1冊『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』が発売された。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの楽天証券・窪田真之氏。本書を開くと、まずチャートが目に入る。そのチャートを見て、買うか売るかを判断するクイズが続いている。なぜ、このような珍しいクイズ形式の本を作ったのか。窪田氏に理由を聞くと、勝てない投資家に欠けている「1つの重大なこと」を明かしてくれた。
最初はデタラメでもOK。実践から学ぶことは多い
──窪田さんの新刊『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』は、チャートを見て上がるか下がるか考えるクイズ形式です。なぜこのような構成にしたのですか?
窪田真之さん(以下、窪田):投資が上手くなるためには実践が大事だと思っているからです。
この本では、最初にチャートが掲載されています。チャートを見て「上がるか、下がるか、様子見か」を考えて、次のページに答えと解説があるという構成。チャートのパターンやシグナルを覚えるのではなく、チャートを見ながら売買判断をして、ポイントを習得していけるようにしました。
──実際に売買しているような感覚で読み進めていけるわけですね。
窪田:はい。今では信じられないことかもしれませんが、私がファンドマネジャーになった時は、たった1年の研修を経て、いきなり大きな金額のファンドを任されました。
ファンダメンタル分析にかたよった知識だけで運用をスタートしたので、チャートのパターンやシグナルは現場で実践をやりながら学びました。
語学の勉強に似ているかもしれません。日本人はすごく真面目で、いろんな単語を暗記します。しかし、使う場所がないのでなかなか身につきません。一方、いきなりアメリカに行った大谷翔平選手は、周りとコミュニケーションしながらあっという間に上達しましたよね。
──会話が通じない時があるかもしれませんが、それも勉強になるということですね。
窪田:そうです。チャートも同じで、移動平均線とかボリンジャーバンドがどういうものか知ることも大事ですが、デタラメでもいいから直感で売買してみて、結果から学ぶ方が早く頭に入ります。
投資は覚えることが多いので、「まずは勉強してから」と考えるとなかなか実践に踏み出せません。本当は、まず売買して、後から本を読む方がすんなり頭に入るんです。
だから私の本は、いきなり売買の現場に放り込まれたのと同じ感覚を味わうことができるようにしています。そういうふうに、作りました。
選択肢は3つ。買うか、売るか、様子見か。
──実践から学ぶという点がファンドマネジャーだった窪田さんらしい発想ですね。
窪田:投資で大金を作ろうと思ったら、毎日相場と向き合う必要があります。これは投資に限った話ではなくて、ピアニストを目指す人は毎日ピアノ弾くでしょうし、プロ野球選手を目指す人は毎日バットを振ります。
ただ、会社員はそのための時間が作れません。投資経験が少ない人にも、株の面白さを知ってもらいたいと思い、本を通じて実践の場を提供しようと考えました。
──買う、売るの判断の他に、様子見という選択肢がある点も実践的だと感じました。
窪田:株式投資は、買うか売るかの二択ではなく、様子見という選択もあります。現実のトレードではほとんど様子見。売買の局面が10回あったとしたら、半分以上は様子見です。それでも、株価が動き始めた時にすぐに売買できるように、チャートを観察し続けることが大事です。
──様子見という選択肢もあるということを念頭に入れておきたいですね。
窪田:チャートは売買のタイミングを掴むために重要な情報です。株式投資の勉強をしても、うまいタイミングで売買できなければ利益になりません。その感覚を身につけるためには実践が大事です。本書を手に取っていただいた人には、チャートのパターンを覚えるのではなく、ファンドマネジャーになったつもりで、チャートを見た時にどうするか、買う、売る、様子見の判断を疑似体験しながら上手くなってほしいと思っています。
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト
大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネジャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績をあげてきた。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる!今日の投資戦略」を連載。月間200万ページビューを超える人気コラムとなっている。主な著書に『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)がある。