「この株は売り? それとも買い?」「儲かる株はどっち?」まるで投資シミュレーションのようにクイズを解きながら「株で勝つ技術」を身につける画期的な1冊『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』が発売された。ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之氏が、何万回にも及ぶ膨大なトレードの末に確立した「トレードで勝つ技術」を1冊に凝縮しただ。投資家には、業績や財務などを見るファンダメンタルズ分析が得意な人と、株価チャートからトレンドを読み取るテクニカル分析が得意な人がいる。さて、どちらのタイプが勝ちやすいのだろうか。窪田氏に話を聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

株トレPhoto: Adobe Stock

稼ぐファンドマネジャーは、意外にも「直感」を大切にしている

──窪田さんの新刊『株トレ——世界一楽しい「一問一答」株の教科書』は、チャートの読み方(テクニカル分析)に絞り込んだ一冊です。なぜチャートをテーマにしたのですか?

窪田真之さん(以下、窪田):25年間にわたってファンドマネジャーをやってきた中で、稼ぐファンドマネジャーは「右脳派」が多く、チャートから情報を読み取る力に長けていると思っていたからです。

 投資は、右脳と左脳をバランスよく使うことによって良い成果が上げられると思っています。左脳は言語を司る脳で、論理ですよね。いわゆるファンダメンタル分析は左脳を働かせることが多いと思います。一方の右脳は、直感とかイメージとか。右脳を働かせることによって、チャートから株価の変化や流れを読み取ることができます。

 腕がいいファンドマネジャーに売買した理由を聞くと、「なんとなく飽きちゃったから売った」とか「面白そうだから買った」などと言います。これは感覚的なもので、彼らは、きちんと業績の分析などもするのですが、チャートを見ながら直感を働かせているわけです。

──どちらの脳を使うかによって読み取る情報が異なるのですね。

窪田:アナリストと比べるとわかりやすいかもしれません。企業の決算説明会などに行くと、アナリストは登壇者が話している内容を細かくメモします。会社に戻ってレポート書きますので、ずっとノートを見ながらメモする必要があるわけです。彼らは左脳派が多く、左脳派が活躍する業種とも言えます。

 一方、ファンドマネジャーが決算説明会で何をしているかというと、ぼーっとしています(笑)。とはいえ、何もしていないわけではなくて、いつもボソボソ喋っている社長が今日は元気だなとか、自信がありそうだから「買い」かなとか、文字になっていない情報を感じ取っています。これが結構重要で、文字や数字で言語化できない情報が売買の理由になることもあるのです。

 もちろん、社長が元気だったから株価が上がるかというと、そこだけでは判断できません。ですから、右脳と左脳を両方を使って、両利きで分析することが大事。チャートには直感的に読み取れる情報が多くあり、株価は刻一刻と変化します。車で例えるなら、ファンダメンタルズ分析はバックミラー、チャート分析はフロントガラスから見える景色です。うまく運転するためには両方見る必要がありますよね。

チャートをたくさん見て「直感的な理解力」を鍛える

──株のトレードが得意な人には左脳派と右脳派、どちらが多いと思いますか?

窪田:右脳派が多いような気がしています。投資家に限らず、例えば、第六感が鋭い女性とか、トランプの神経衰弱が強い子どもとか、物事を画像として捉えたり、非言語情報を読み取るのがうまい人は多いのではないでしょうか。チャートで売買している人の中にはチャートのシグナルを1つ1つ暗記している人がいますが、それは左脳派のアプローチです。右脳派は、チャートを見て、上がりそう、下がりそうといったことを直感的に理解するのです。

──窪田さんは右脳派ですか?

窪田:私は左脳派です。人の顔を覚えるのが苦手ですし、神経衰弱も弱くて、幼稚園児だった子どもと真剣勝負をして負けたこともあるほどです(笑)。そういった自己分析も含めて、昔から自分にはチャートを右脳で読む力が欠けていると思っていました。その部分を補うために、毎週土日に東証一部の全銘柄のチャートをチェックして、自主トレーニングを続けていました。

──チャート読みで右脳を鍛えたわけですね。

窪田:そうですね。私はアクティブファンドの運用をしていましたので、東証株価指数に勝つことを求められていました。25年間にわたってファンドマネジャーを続けることができた理由の一つは、チャートのトレーニングで右脳を鍛えて、左脳と右脳のバランスがよくなったことであり、そのことが運用成績の向上に繋がったのだと思っています。

窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト。
大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネジャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績をあげてきた。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる!今日の投資戦略」を連載。月間200万ページビューを超える人気コラムとなっている。主な著書に『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)がある。