「この株は売り? それとも買い?」「儲かる株はどっち?」まるで投資シミュレーションのようにクイズを解きながら「株で勝つ技術」を身につける画期的な1冊『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』が発売された。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの楽天証券・窪田真之氏。窪田氏は「上がるはず」「下がるはず」といった思い込みこそが、売買判断を鈍らせる要因だと断言する。ある投資家の思い込みが銀行の破綻を招いてしまった大事件について語ってくれた。
チャートが「売れ」と言っているなら、どんな株も売らないといけない
──株式投資では、ファンダメンタルズ分析とテクニカル(チャート読み)を両利きで使えるようになることが大事と伺いました。この2つの分析をしたときに、判断が食い違うということもあるのでしょうか。
窪田真之さん(以下、窪田):もちろん、あります。私がファンドマネージャーをしていた時の話をします。ある小型株を調査したところ、私が考える「成長株の3条件」を満たしていました。3つの条件とは、市場の成長性が高い、市場シェアが高い、参入障壁が高い、の3つ。ところが、チャートは崩れてきていました。それでも私は、ファンダメンタルズ分析を信じて、この株を買ったのです。
しかし、株価は下がり続け、結局、買値の半値で手放すことになりました。買った後のチャートに「売りシグナル」がたくさん出ていたにもかかわらず、目に入らなくなっていました。
──ファンダメンタルズ分析を重視しすぎて、「株価は上がるはず」と信じ込んでいたわけですね。
窪田:ファンダメンタルズがどうあれ、その企業にどんな技術や魅力があったとしても、買値から10%も20%も下がるようなら、何かを間違えています。
日経平均株価が20%下がり、つられて個別の株価も2
投資のプロでもハマってしまう「思い込み」の落とし穴
──個人投資家の中には、自分の考えを信じすぎたり、意地になって値下がりしている株を持ち続けたり、買い増ししてしまう人も多いと思います。
窪田:それはプロでも同じことです。私がまだファンドマネージャーだった1995年、英国のベアリングス銀行が破綻する出来事がありました。その原因は、ニック・リーソンというトレーダーが日経平均先物を大量に買い持ちしたことです。
当時の日本は阪神淡路大震災が起きたばかりで、国内経済もバブル経済が崩壊しています。そのような状況の中で、リーソンが買い持ちした大量の先物が大きな損失を生んだのです。
──その時、窪田さんは売り手側だったのですか?
窪田:そうです。どう考えても下がると思っていましたし、チャートにも「売りシグナル」が出ていましたから、リーソンの逆で日経平均の売り建てをしていました。
しかし、
結局、日経平均先物は買い手に損切りを迫る水準まで下がり、
──プロでもそのような失敗があるのですね。
窪田:最近はロボットによる売買が増えていますが、売っているのも買っているのも人なんです。リーソンは、最初はそんなに大量の買いを持つつもりはなかったと思います。買っているうちに損失がふくらみ、途中からは、これより下がったらクビになる、自分の買い建てを守らないといけない、という恐怖感で買っていたのだと思います。
「寝返りの売り」「寝返りの買い」が起きると、株価が一気に動く
──失敗を減らすにはどうしたら良いのでしょうか。
窪田:やはりチャートをよく観察することですよね。チャートには変化が現れますし、変化を掴めば、失敗を減らすだけでなく利益を得るチャンスにもなります。このケースで言えば、リーソンが買いを諦めて売りに回るとみんなが思う時に下落が加速
「寝返りの売り」と「寝返りの買い」は、チャートから読み取ることができます。このような局面で株価は一気に動きますので、そのポイントを逃さないことが大事だと思います。
楽天証券経済研究所 所長兼チーフ・ストラテジスト。
大和住銀投信投資顧問などを経て、2014年より楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。2015年より所長兼務。日本株ファンドマネジャー歴25年。年間100社を超える調査取材をこなし、公的年金・投資信託・NY上場ファンドなど20代で1000億円以上、40代で2000億円超の日本株運用を担当。ベンチマークである東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回る運用実績をあげてきた。楽天証券では2014年から現在まで、同社投資メディア「トウシル」にて月曜日から木曜日まで「3分でわかる!今日の投資戦略」を連載。月間200万ページビューを超える人気コラムとなっている。主な著書に『株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)がある。